3Dプリント副業を始めて4年。これまでに50点以上の商品を世に出してきたが、最初の本命商品として今も売れ続けているのが、OLIGHTのテールライト「SEEMEE30」をサドルに横向きで装着するマウントです。
開発のきっかけは、ライド中に閃いた一言。
「ハイマウントストップランプって、ロードバイクで再現できないかな?」
——その思いつきが、4年売れ続けるロングセラー商品の出発点になりました。本記事では、副業実践者の視点で「ニッチな閃きが商品化される過程」を、試作の失敗・購入者からのフィードバック・改良の判断ポイントまで含めて振り返って共有します。
振り返って気づいた3つの共通点
4年間でおよそ100点を設計してきた。販売まで残ったのは50点超で、当たって長く売れたものもあれば、ボツにしたものも、すぐ消えたものもある。振り返ると、長く売れた商品には3つの共通点があった。
| 共通点 | 内容 | SEEMEE30マウントの場合 |
|---|---|---|
| ① 自分が欲しい | 市販品への不満を自分自身が抱えている | ゴムバンドの後付け感が嫌だった |
| ② ニッチが空いている | 競合がいない・少ない領域 | 横向き専用マウントは市販ゼロ |
| ③ 改良サイクルが回る | 購入者からのフィードバックを反映 | 4年で30回以上の改良 |
ただし、これは絶対の法則ではない
物販の基本は、すでに売れているものに+αを乗せる「マーケットイン」のほうが確率は高い。一方で、自分が作りたいものを作る「プロダクトアウト」はリスクが高いと言われる。
それでも私は、自分が欲しいものから入っていいと思っている。理由は、3Dプリンタ副業の特性にある。
- 在庫を持たない(売れなくても損が少ない)
- 金型不要・改良コストゼロ(プロダクトアウトの最大の弱点を解消)
- 失敗しても、経験とアイデアが蓄積する
- 失敗作も、次の商品の土台になる
副業で一番難しいのは「続けること」。売れる商品を狙っても、自分が興味の持てない領域だと続かない。だから最初は、自分が満足する形から入っていいと思っています。
100点近く設計して、販売まで残るのが半分。そこから当たるのは更に数点。でも当たった数点が、ロングテールで4年・5年と売れ続ける。それが3Dプリンタ副業の面白さです。
要はバランス。マーケットイン100%でも、プロダクトアウト100%でもなく、自分が興味を持てる範囲で、ニッチを掘る。

ある日、車のリアを眺めていて閃いた
副業商品の出発点は、たいてい 「自分が欲しい」(または 「依頼してくれた人が欲しい」)から始まることが多い気がします。市場調査からではなく、リアルな不便の体験から始まる方が、長く続く印象があります。
OLIGHTのSEEMEE30は、ロードバイク乗りの間で人気のテールライト。
- 80ルーメンの明るさ
- ブレーキセンサー内蔵(減速で点滅強度UP)
- USB-C充電
- スタイリッシュなアルミボディ
スペックは申し分ない。問題は装着方法でした。純正のゴムバンドをシートポストに巻きつける方式。「とりあえず付けた感」が拭えない。エアロ形状のシートポストにはズレやすいし、何よりサドル一体感がない。
📌 3Dプリンタ持ちの口グセ
「カッコ悪いまま使い続けるか、自作するか」——3Dプリンタを持っている人間の頭にはいつも、この選択肢が浮かぶ。
ある日のライド中に、ふと頭に浮かびました。「縦型のライトを横向きにしたら、かっこ良いのでは!?」
走りながらSEEMEE30(縦置きが基本)を頭に浮かべていると、ふと 車のハイマウントストップランプ(リアウインドウ上部の横一直線の赤いランプ)が思い浮かびました。車体と一体化しているからこそカッコいい——これをロードバイクで再現したい。サドル後端に、SEEMEE30を横向きに装着したらどうだ?
サドルラインと並列に光るテールライト。ゴムバンドが見えない。車のハイマウント風——。帰宅後すぐ、Fusionを開く頭になっていました。
※ライド中は、いろんなアイデアが出やすいみたいです。頭がリラックスしつつ、景色や走行の感覚から発想がジャンプしやすいタイミングだと感じます。
市販品の何が不満だったか — 比較で見えた”穴”
開発に着手する前に、既存マウントを徹底比較した。Amazon・Etsy・Cults3D・国内メーカーすべてチェックした結果がこれ。
| 項目 | 純正ゴムバンド | 市販3Dプリント品 | 自作横向きマウント |
|---|---|---|---|
| 装着位置 | シートポスト(縦) | シートポスト(縦) | サドル後端(横) |
| 見た目 | 後付け感 | 本体感は出る | 車のハイマウント風 |
| エアロ対応 | ズレやすい | ズレ防止あり | サドルに固定 |
| ゴムバンド | あり(露出) | あり(露出) | 見えない設計 |
| 専用設計 | 全車種共通 | サドル形状に非対応 | サドル別専用 |
| 市販ステータス | OLIGHT純正 | 当時はほぼ皆無 | 誰も作っていなかった |
決定的だったのは最後の行。当時(2022年頃)、3Dプリンタでサドルマウントを作る人はほぼ皆無。まさにブルーオーシャンでした。市場が小さくても、競合が少なければ稼ぐ余地が出る。逆に競合が多い領域は、価格競争に巻き込まれて利益が残りにくい。
今ではライバルも増えてきましたが、4年の改良蓄積で先行優位を保てているのは、早めに動いた恩恵です。
💡 振り返って思うこと①
市販品の不満をリストアップして、「誰も解決していない」項目を1つでも見つければ、それは商品化の種になりそうです。

4年間の試作プロセス — 30回以上の改良
開発は順調ではありませんでした。むしろほぼ毎年、構造を見直した。
商品開発の3ステップ
毎回の改良は、副業の限られた時間の中で3Dスキャン → CAD設計 → 3Dプリンタで試作を高速で回すことで実現してきた。
- ① 3Dスキャナーで現物のサドルをスキャン(既製品の複雑な形状を正確に3Dデータ化)
- ② CADソフトでマウントを設計(スキャンデータに合わせて完全フィットの形状を作る)
- ③ 3Dプリンタで試作・検証(数時間で物理的に確認できる)


この「現物→デジタル→物理」のサイクルが、汎用品では出せない一体感の源になっていると感じます。市販品が真似されにくいのは、ここに数万円の3Dスキャナーと数十時間の試行錯誤があるからかもしれません。なお同じ流れで作った周辺パーツとしてOakley Jawbreaker専用バックミラーもあります(1年の試行錯誤の記録)。
バージョン1:爪はめ込み式(初代・失敗)
コンセプト:SEEMEE30本体の爪を、マウント側のスロットに直接はめ込む。ゴムバンドを使わない最小構造。
結果:装着するときに爪を曲げる必要があり、繰り返し脱着で爪が折れる事故が発生。販売後、お客様から「爪が折れた」とのクレームをいただき、急ぎ改良して対応しました。その時生まれたのが、次のバージョン「片持ち+ゴムバンド固定」です。
❌ 失敗から学んだこと
最初の試作は、だいたい失敗する。でも”何が問題か”が分かるのが大きい。
バージョン2:片側差し込み+ゴムバンド(量産1代目)
コンセプト:片側を差し込み固定、もう片側をゴムバンドで補助。爪への負荷を分散。
結果:装着性が大幅に改善。販売開始へ。
バージョン3:着脱可能なピン機構(雨対策)
コンセプト:購入者から「雨天時に防水が心配」とのフィードバック。ピン1本でライトが外せる構造に変更。
改良ポイント:雨の前にライトだけ家に持ち帰れる/走行中は確実に固定/充電時もマウントを外す手間が消える。
結果:レビュー評価が大幅改善。リピート購入も増えてきました。
💡 振り返って思うこと②
購入者のフィードバックは”次の商品改良のロードマップ”だと感じています。Amazon・メルカリのレビューを毎週チェックする習慣にしています。
バージョン4:1から見直して、現行モデルへ(片持化+TPU+専用設計)
V3まで売れ続けてきたが、購入者が増えるにつれ「もっと良くしたい」改善点が7つ見えてきた。一度1から見直して、現行モデルへ大改修。
🔧 改修ポイント7つ
- 両持ち固定 → 片持化(脱着時に力が逃げる構造)
- ベース部のサドル一体感UP(よりカッコよく)
- ゴムバンド形状の最適化(脱着用持ち手)
- 充電端子保護 分割設計(差し込み形状)
- ゴムバンド脱着用専用工具を追加
- ボルト取付部の細かい造形修正
- + 多数の微調整
素材・印刷条件の見直し
- ゴムバンド:TPU素材(柔らかいゴム)に変更 → 振動吸収・伸縮性確保
- 力がかかる部分:インフィル100% → 強度を確保した設計
サドル別専用シリーズ展開
「Specialized Power 専用」「Fizik Antares 専用」「ボントレガー Aeolus 専用」など、サドル形状に合わせた7機種を展開。汎用品ではない究極の一体感。
結果:ロングテール戦略で累計500個超。リピート購入(複数バイクへの装着)。Etsy・メルカリShopsでもランキング上位。

バージョン5:発送時の工夫 — 専用BOXに込めた「同梱忘れ・破損ゼロ」
商品本体だけでなく、お客様の手元に届くまでの工夫も4年で進化した。
完成品を発送する時、見落としがちな課題が2つあった。
- 同梱パーツの入れ忘れ
- 輸送中の破損
これを解決するために、専用BOXまで3Dプリンタで作った。
📦 専用BOXの工夫
- インナーボックスにパーツ毎の凹みを設計
- 入れ忘れがあれば空きで即視認 → 同梱忘れゼロ
- 各パーツが固定 → 輸送破損ゼロ
BOX中身
- マウント本体
- 予備ゴムバンド
- バンド脱着用工具
- 取り付けボルト×2
「ここまでやるか」と思われるかもしれないが、累計500個分のお客様の声から、必要だと判断した。
振り返って効いた”3つの工夫”
工夫① ニッチを”自分の経験”で掘る
リサーチに頼ると、みんなが見つける場所しか掘れず、レッドオーシャンになりがちです。逆に、自分の趣味・専門分野で感じた違和感を起点にすると、誰も気づいていないニッチが見つかることもあります。
筆者の場合:ロードバイクに乗る × SEEMEE30を使っている × ゴムバンドの後付け感に違和感。この3条件の重なりは、世界中でも少ないはず。だから商品化した当時は競合がいませんでした(今ではライバルも増えています)。
💡 振り返って思うこと③
「自分の趣味 × 経験 × 違和感」の重なりを掘ると、競合の少ないニッチに辿り着けるかもしれません。
工夫② 試作回数より”改良サイクル”を意識する
3Dプリント副業の優位性は、改良コストがほぼゼロであること。金型は作らない(射出成形なら100万円〜)。在庫を持たない(受注生産OK)。データを修正してプリントすれば翌日には新バージョン。
このスピード感を活かすには、1回の試作で完成を狙わないこと。「とりあえず売って、フィードバックで改良する」が自分には合っていました。30回以上の改良を繰り返すうちに、少しずつ売上も伸びていきました。
工夫③ 一発ヒットより”ロングテール”を実感
副業の初期は「月5万円でも稼げれば」と思っていました。つい爆発的にバズる商品を狙いたくなりますが、爆発する商品は再現性が低い。コツコツ売れ続ける商品を10種類持つほうが、収益は安定すると感じています。
SEEMEE30マウントは、爆発的な売上ではありませんが、コツコツと売れ続けています。派生商品(サドル別7機種)を合わせると、累計500個超のロングセラー資産になりました。これがロングテールの実感です。
あくまで自分の経験の範囲ですが、ロングテール戦略は、3Dプリント副業の現実的な選択肢だと感じています。
このマウント、動画でも紹介しています
つくはるガレージのYouTube Shortsで「ハイマウント化した日」として公開しています。SEEMEE30をサドルにどう装着したか、その見た目と装着プロセスを30秒の物語型動画にまとめました。
🎬 開発の裏側を順次公開中
- EP1:テールライトをハイマウント化した日 (公開済・5/16)
- EP2:ロードバイクの自作マウント30秒で組付け (公開済・5/19)
- EP3:最初の設計が壊れた話 (5/23公開予定)
- EP4:1から見直して、現行モデルへ (5/27公開予定)
- EP5:商品BOXができるまで (5/30公開予定)
👉 チャンネル登録はこちら:つくはるガレージ @TsukuharuGarege
マウントラインナップと購入先
SEEMEE30専用マウントは、現在7種類のサドル別専用版を展開中。詳しいラインナップは、母艦記事の完全ガイドをどうぞ。
👉 SEEMEE30 サドル別専用ホルダー完全ガイド【ロードバイク・7種】
🛒 購入先:
- 公式SHOP(最速・最安):3dfitdesign.com
- メルカリShops:3D Fit Design店舗
- Etsy(海外向けSTL):3dfitdesign.etsy.com
- Cults3D(海外STL):@tsukuharu
🛒 OLIGHT SEEMEE30 本体(マウントと併せて購入推奨)
よくある質問(FAQ)
Q1. どのサドルにも合いますか?
A1. 7機種の専用版で対応(Specialized Power、Fizik Antares、Bontrager Aeolus等)。汎用版もありますが、見た目の一体感は専用版が圧倒的です。
Q2. 雨の日の防水は?
A2. SEEMEE30本体はIPX4防水ですが、ピン1本で簡単に取り外せる設計なので、悪天候の前に屋内に持ち帰ることを推奨します。
Q3. 自分のサドル用がない場合は?
A3. カスタム制作対応しています。サドル写真と寸法を送っていただければ、専用設計します。
Q4. STLデータだけ買えますか?
A4. 海外向けにEtsy・Cults3DでSTL販売しています。国内向けは現物販売中心です。
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