※本記事はプロモーションを含みます(Amazonアソシエイト他)
ロードバイクに乗っていると、結構な頻度で「この車、嫌がらせしに来てるな」と思う瞬間があります。
反対車線はガラガラなのに、わざわざギリギリを通っていく車。ロードバイク乗りなら、一度や二度は経験があるシチュエーションですよね。
都度振り返って後方確認するのは、バランスを崩すので余計に危険。だけど後方確認はしたい!そう思って、誰もが一度は市販のバックミラーを検討します。でも、調べれば調べるほど、買う気が失せていく。なぜか?
どれもこれも、びっくりするほどダサいからです。
この記事は、Oakley Jawbreakerユーザーの私が、市販バックミラーに絶望した末に、3Dプリンタで専用ミラーを自作してしまった約1年の記録です。
X(旧Twitter)に投稿してきた30本の開発ログを時系列で埋め込みながら、試作の失敗、素材選定のバトル、引張試験機の自作、小さな早期割引完売の瞬間、そして材料事件による販売停止まで、等身大の開発ストーリーをお届けします。
ロードバイク用バックミラー、市販品が「ダサい」3つの理由
まず前提の整理から。私が検討した市販品は、大きく3タイプありました。
1. バーエンド装着型
一番よく見かけるタイプ。ただ、お世辞にもかっこいいモデルを見たことがない。位置的にミラーまでの距離が遠くなるので、後方を見るにはミラーを大きくしないと見えない。大きくすれば余計に目立つ。自分のロードバイクには、どう考えても付けたくなかった。
2. ヘルメット・サングラス延長型
いわゆる「指し棒的」な細長いアームを、ヘルメットやサングラスの隅に取り付けるタイプ。調整箇所が長さとミラー角度のみで自由度が低い。そしてなんと言っても、サングラスに取り付ける部分が野暮ったい。取付方式そのものが見た目を崩している。
3. サングラス一体型(レンズ面にミラー)
レンズに小さな反射面を設けるタイプ。そもそもレンズ性能が気になる。高価なサングラスのレンズ品質を犠牲にして、ミラー機能を得るのは割に合わない。敬遠しました。
2026年追記:AliExpressで見つけた「意外と良い」市販品
最近、AliExpress でサングラス取付型のミラーで、なかなか良いモデルを発見しました。デザインも許容範囲、価格も手頃(2,000円以下)。「まずは市販品から試したい」という方にはアリです。
Sunglass
Mirror
参考:Amazonで買える市販バックミラー4タイプ
Amazon で手に入る主なロードバイク用バックミラーを、紹介しましたが、私は既に自作したので、使ってはいません(笑)
※ AliExpressアフィリエイトリンクを含みます
ただ、私は既に自作したので、使ってはいません(笑)
レーダーとの併用でも埋まらない「車幅の不安」
次に導入したのが、リアレーダー。後方から来る車を事前検知してくれる、ロードバイクの新標準装備です。
以前は Garmin VARIA シリーズが独占していた分野ですが、最近は安価な中華系モデルでも十分な機能を持つものが増えています。おすすめは以下:
おすすめのレーダー(価格帯別)
| モデル | 価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|
| COOSPO TR70 | 〜1万円 | 2025-2026年の話題モデル。コスパ最強 |
| Magene L508 | 〜1.5万円 | Wahoo 1/4ターンアダプタ経由でGarmin VARIAマウント互換(ユーザー情報) |
| Garmin VARIA RTL515 | 2〜3万円 | 純正の安定感 |

これらのレーダーは本当に便利です。後方から来る車をかなり手前から検知してくれて、しかも何台来ているかまで分かる。音で察知するよりも遥かに情報量が多い。
ただし、レーダーには限界があります
- 車が近づいていることは分かる
- でも、車が車道のどの位置を走っているかは分からない
- つまり、車幅を開けて通り過ぎるのか、ギリギリで抜けるのかが分からない
毎回、恐怖を感じながらサイコンのレーダー画面を見ている自分がいました。
レーダーで「来る」を知り、ミラーで「どう来る」を確認する——これが安全装備の完成形です。結局、ミラーは必要。でも市販品は全部ダサい。
ロードバイク乗りの「さが」なのかもしれません。かっこよさ >> 安全性の担保。ダメだけど笑。
📘 ちなみに:各レーダー用の3Dプリント製マウントも設計しています
COOSPO TR70 専用、Garmin VARIA 用、そして Magene L508(Wahoo アダプタ経由)用のサドルマウントを 3Dフィット工房で設計・販売中です。Power Saddle など各サドルに合わせてカスタムできます。 👉 マウント商品一覧(3dfitdesign.com)
「作るしかない」— 3Dプリンタ持ちの宿命
ここまで来ると、3Dプリンタを持っている人間の思考回路は一択です。
「じゃあ自分で作るか。」
これは 3Dプリンタあるあるですよね。市販品に不満がある → CADを開く → 試作する。この流れに入ると、もう止まりません。
ここから先は、X(旧Twitter)に残した実際の開発ログを時系列で並べながら、約1年の試行錯誤を追いかけていきます。
【フェーズ1】発案と原点:Oakley Flight Jacket 用ミラー(2024年3月)
🌱 2024-03-11:発案と3Dスキャン
最初に作ったサングラス用ミラーは Oakley Flight Jacket 用でした。当時のメイン機がこれだったので、まずは現物をスキャンするところからスタートです。
🔨 2024-03-16:試作1号を Flight Jacket に装着
スキャンデータから設計を起こして、試作1号を3Dプリント。調整機能はミラー部のみという、今思えば相当プリミティブな構造。

🎥 2024-03-16:実走で後方確認できることを確認
同じ日のうちに実走。後ろがちゃんと見えることをその場で動画撮影しました。手応え十分。
📏 2024-03-20:「ミラー大きくしたら視界の邪魔」問題
後方確認の視認性を上げたくて、ミラーを拡大してみたところ——大きくすると今度は前方視界の邪魔になるという逆問題が発覚。バランスが命。
🧩 2024-03-23:分割設計への転換
最初はボールジョイントを一体印刷で作っていましたが、造形が安定しないしサポートも外せない。分割印刷して後からドッキングする方式に切り替えたら、造形精度が一気に改善しました。
🎨 2024-03-24:FUSIONフォーム機能でフレームにピッタリ
Flight Jacket のフレーム形状は3D曲面が複雑。通常のCADだとなかなか寄せきれなかったところを、Fusion 360のフォーム機能を使ったら一気にフィット精度が上がりました。
🔄 2024-03-30:位置調整の必要性を痛感
ミラーの位置を変えた2種類を試作。「乗車姿勢や好みでベストポジションは変わる」と気づいた瞬間。調整機能なしには実用にならないという学びがここで確定します。
✨ 2024-03-31:個体タイプで完成度UP
個々の課題を潰し続けて、「だいぶ良くなってきた」と手応えを持てた日。
👥 2024-04-01:テスター意見募集
一度この状態でXのコアフォロワーにテスター募集。Flight Jacket 用ミラーとしては、ほぼ形が見えていた時期。
- 後方確認の効用は実走で即確認できる
- ミラーサイズは大きすぎると前方の邪魔
- ボールジョイントは一体→分割ドッキングのほうが造形安定
- FUSIONフォーム機能でフレームフィット精度が一段上がる
- 調整機能なしでは実用にならない(これが後のデュアルピボットへの伏線)
【空白の4.5ヶ月】テスター意見を受けての再設計(2024年4月〜8月)
テスター募集後、約4.5ヶ月間、X上では VeloMirror の進捗投稿が止まっています。
この期間は、集まったテスター意見を消化しながら、複数のパラメータを同時に動かして試行錯誤する内省期でした。8月の再始動で、作風が一段階ジャンプしています。
【フェーズ2】調整機構の深化(2024年8月)
🎚 2024-08-17:調整箇所を2か所に増やす
ついに可動部を2軸化。位置調整の幅が飛躍的に広がりました。これが現行モデルのアイデンティティ「デュアルピボット」の原型です。
📐 2024-08-18:長さも調整可能に
角度だけでなく長さも調整可能なパーツを追加。ミラーまでの視点距離を微調整できるようになりました。
⚠️ 2024-08-20:段差衝撃で可動部が勝手に動く課題
可動範囲を広げると、今度はアームの自重で段差の衝撃時に可動部が勝手に動くという課題が発生。動いてしまったら、後方確認に使い物にならない。
🔩 2024-08-23:可動部をねじ込み式に変更
摩擦で止める→ねじ込みで固定するという思想転換。衝撃では一切動かず、人が意図して回したときだけ調整できる構造へ。
📏 2024-08-25:視点距離の微調整用の延長パーツ
ベースとミラーの間に長さを足せる延長パーツを組み込む形に。ユーザーの体格・乗車姿勢に合わせてベストな視点距離を選べるようになりました。
💎 2024-08-27:ミラー厚み 0.2mm → 0.5mm
ミラーが薄すぎると貼り付け時にわずかに歪み、鏡像に波打ちが出てしまう。厚みを0.2mmから0.5mmへ変更したら歪みが改善。
💫 2024-08-31:ミラー部そのものが調整の主役にスタイリッシュ化
外観の見直しも進め、ミラー部自体を調整の主役にする思い切ったデザインへ進化。機能美を優先した結果、見た目もシャープに。
【フェーズ3】商品化への整備(2024年9月前半)
📦 2024-09-04:専用梱包ケース完成
発送時の保護とパーツ入れ忘れ防止を目的に、3Dプリント製の専用梱包ケースを設計。発送後は小物入れとして再利用できる仕様も意識しました。
📸 2024-09-06:商品撮影スタンド自作
商品ページ用の撮影を見越して、サングラスを立てるスタンドも自作。これがあると撮影の再現性が段違い。
【フェーズ4】Jawbreaker への展開(2024年9月中旬)
🔀 2024-09-10:Jawbreaker展開の構想
Flight Jacket版で形が見えてきたので、他のサングラスへの展開を検討。手持ちの Oakley Jawbreaker を見たときに、側面の穴が目に入りました。「この穴を使えば後付け感なく装着できるんじゃないか?」——これが VeloFit Mirror for Jawbreaker 誕生の瞬間です。
🔩 2024-09-14:ビス+内側カラー機構の実装
構想から4日で試作が完成。「穴に外側からベースを当て、内側からカラーを差し込み、ビスで締めるとカラーが広がって穴の内壁を掴む」——フレーム無加工でミラーベースを固定できる構造です。
この方式の価値は、「穴を新たに開けず、既存の穴を利用する」という一点に尽きます。Oakley の美学を1ミリも損なわない。これが VeloFit Mirror の根幹です。
【フェーズ5】完成・先行販売・即完売(2024年9月21日)
🎬 2024-09-21 16:21:一旦の完成
デュアルピボット+ビス内側カラー機構+調整長+ミラー厚み0.5mm。約6ヶ月半の試作で、Jawbreaker版の骨格がほぼ定まりました。
🎉 2024-09-21 16:32:わずか11分後、先行販売即完売
投稿から11分後、早期割引の先行販売を開始→即完売。これは派手な完売ではなく、X上のコアフォロワーが中心のロット6〜10個の地味な完売でしたが、「作った物に対してお金を払ってくれる人がいる」という強烈な実感がありました。
- 2024-09〜2026-03 の1.5年で 累計20件強
- メルカリShops・Etsyを加えても数十件レベルの少量生産型
- 1回の販売はだいたい 6〜10個のロット
【フェーズ6】出荷運用の磨き込み(2024年9月後半)
🏷 2024-09-22:動画マニュアルをボックスに貼付
取付説明を動画マニュアル化して、QRコード付きラベルを梱包ボックスに貼付。「開けた瞬間に迷わない」体験を目指しました。この作業、ラベルプリンターがめちゃくちゃ効率化してくれます。
📦 2024-09-24:専用梱包ケースの目的説明
発送前に改めて専用梱包ケースの設計意図を説明した投稿。①パーツ入れ忘れ防止、②発送時保護、③発送後の小物入れ再利用。受け取った瞬間にこだわりが伝わることを最優先にしました。
📎 2024-09-26:接着剤 → 両面テープへ(フォロアーの知恵)
ミラーの貼り付けが接着剤だとどうしても気泡が入る or 位置決めでやり直せない。困ってXに書いたら、フォロアーさんから両面テープを勧められて即採用。作業時間が激減し、失敗率も下がりました。
Xで困りごとを正直に書くと、プロの現場知識を持つフォロアーがヒントをくれることがあります。これは1人で作っていたら絶対に辿り着かなかった改善です。
✂️ 2024-09-28:ミラー切断用の治具を自作
ミラーカットは製造で一番地味に時間を取られる工程。専用治具を自作して、切断精度と速度を同時に改善しました。
【フェーズ7】PC-CF事件と誠実な刷新(2024年9月末〜10月)
🚨 2024-09-29:PC-CF のチクチク問題で販売停止・使用停止依頼
強度を求めて採用していた Prusa の PC-CF(カーボン繊維入りポリカ)。加工中に指にチクチク刺さる極細繊維の存在が問題化。YouTube上でも危険性が指摘されたこともあり、販売中止+既発送ユーザーへの使用停止依頼を決断しました。先行販売のお客様にはキャンセルをお願いすることになり、これは今でも反省点です。
素手で加工する機会が少しでもあるなら、避けた方が無難です。完成後に形状加工が発生する製品では特に注意してください。
🔄 2024-09-30:材料強度ダウンを前提に形状再検討
PC-CF から ABS(および後に Prusa Blend PC)に切り替えると、引張強度が落ちる。落ちた強度でも安全側に収まるように形状(肉厚・リブ・荷重経路)を再検討している様子。
🎨 2024-10-02/04:新デザインの決定(結構かっこよくできた)
強度ダウンを逆手に取って、デザインそのものをリフレッシュ。結果、今のVeloFit Mirror の姿が確立しました。制約が創造を連れてくる、という好例。
💎 2024-10-08:ミラー厚みを再度アップ
8月に0.2→0.5mmへ厚みアップしたミラーですが、デザイン刷新後の使用条件で再び歪みが気になるケースが発覚。さらに厚くして歪みを抑え、現行仕様に定着しました。
補足: TPUオーリングが「ブレない」理由
可動部を増やすと、今度は「適度な硬さ」の問題が出てきます。
- 硬すぎる → 調整できない
- 柔らかすぎる → 段差で動く
ここで活躍したのが、TPU(熱可塑性ポリウレタン)製のオーリング。TPU の適度な弾性を活用することで、調整できるのに、段差で動かないという絶妙な抵抗感を実現。これが現行モデルの隠れた心臓部です。
時速50km/hオーバーの下りでもブレないのは、このオーリングのおかげです。
素材選定の科学:引張試験機をDIY
📹 引張試験のサンプル映像:こちらのX投稿で確認できます(壊れたときの値で強さを比較しています)。
PC-CF からの切替で悩んだときに、印象や経験則ではなく数値で選びたいと思って、引張試験機を自作しました。
- 参考データ:Printables に公開されていた海外ビルダーのモデル(同じテンションメータはなかったので、一部変更しています。詳細は別途書きたいと思います)
- 1200N 電動アクチュエータ
- テンションメータ(Amazonで手頃なもの)
- アルミフレームでスライド機構
- 総費用:数万円(市販品の10分の1以下)
この装置で各素材の積層方向の破断強度を測定。サドルマウントの破損事例がすべて積層方向だったためです。
結果、Prusament PC-Blend(Prusa Blend PC)が強度・加工性・安全性のバランスで最強、副次的にQIDI PETG タフも優秀という結論になりました。
▶ Prusament PC-Blend(本体素材の最適解)は Prusa公式ストアで購入できます(海外発送対応)。QIDI PETG-Tough は国内Amazon・楽天で入手可能です。
引張試験機DIYの全手順・素材別の強度データは、別記事で詳しく書く予定です。Printables参考モデル・1200Nアクチュエータ構成・実測データまで公開します。
💎 2024-10-10:TPU製エッジカバーで切断面を保護
ミラー切断面のエッジは鋭く、手を怪我するリスクがあります。そのため、TPU製のエッジカバーを追加。安全性が一段上がりました。
今後の課題:汎用フレームへの展開
現時点での VeloFit Mirror は、Oakley Jawbreaker 専用です。
2025年7月には Amazon で売られているオマージュ系サングラスでも装着可能と確認できました。
[EIENNO] 調光・偏光・イリジウムレンズ3枚・スイッチ交換タイプのJB型は、Oakley Jawbreaker と寸法がほぼ同じで、VeloFit Mirror もそのまま装着可能です。純正 Jawbreaker が高価なので、試しにバックミラーを使ってみたい方には現実的な選択肢です。
ただし、全く別のフレーム形状への汎用化はまだ答えが出ていません。
- PLA を熱湯で柔らかくして巻き付ける案 → ホールド不足で失敗
- 湾曲パターンの加工 → ミラー部が歪む失敗
これは今後もチャレンジし続けるテーマです。アイデアのある方は、ぜひ X(旧Twitter)で @tsukuharu_3D までお声がけください。
VeloFit Mirror を入手する
本記事で紹介した VeloFit Mirror for Oakley Jawbreaker は、以下のチャネルで販売しています。少量生産のため、お届けまで約1週間かかることをご了承ください。
完成品がほしい方
- 公式オンラインショップ(3dfitdesign.com)
👉 商品ページを見る
- メルカリShops
👉 メルカリアプリで「つくはる」を検索
海外発送
- Etsy Shop(3dfitdesign)
Ships worldwide. Search “Jawbreaker mirror” in our shop.
3Dプリンタをお持ちの方(STLデータ)
- Cults3D
カスタムのご相談
別のサングラス用、特殊な取付要望など、カスタム対応も可能です。X @tsukuharu_3D までお気軽にどうぞ。
まとめ:市販品に絶望したら、作ればいい
VeloFit Mirror の開発記を一言でまとめるなら、「市販品への絶望が、オリジナル商品を生む」 ということに尽きます。
- 不満を言語化する
- 解決策を自分で試す
- 失敗をXに記録する
- フォロアーの知恵を借りる
- 改良を続ける
ロードバイクの安全を、かっこよく守る。 これからも、自分の「絶望」から商品を生み続けます。
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