PETGは印刷方向で強度が変わる?XY・Z方向を引張試験で比較

※この記事にはアフィリエイトリンクを含みます。リンク経由で購入された場合、当サイトに紹介料が入ることがあります。試験結果と評価は実測データに基づいています。
3Dプリンターで作る部品は、同じPETG、同じ形、同じ印刷設定でも、造形する向きによって引張強度が変わります。
今回はQIDI PETG-Toughを使い、プレートに寝かせたXY方向を5本、立てて造形したZ方向を10本測定しました。
結果は、Z方向が平均37.6MPa。XY方向は5本すべてが測定機の上限500Nを超えた表示になり、表示値から計算した平均は55.2MPaでした。ただしXY方向は測定範囲外なので、55.2MPaは精度を保証できない参考値です。この記事でも正確な倍率としては扱いません。
動画では、実際に引っ張って破断する様子と、XY・Z方向の違いを約2分で確認できます。
結論:今回のPETGはXY方向の方が高い値を示した
今回の結果を先にまとめます。
| 造形方向 | 試験数 | 平均破断応力 | 測定の扱い |
|---|---|---|---|
| XY方向(寝かせて造形) | 5本 | 55.2MPa | 測定範囲外の表示値から算出した参考値 |
| Z方向(立てて造形) | 10本 | 37.6MPa | 測定範囲内 |
今回の条件では、寝かせて造形したXY方向の方が高い値を示しました。一方、XY方向は5本すべてで測定機の上限を超えています。そのため「XY方向はZ方向の何倍」と正確に断定できる試験ではありません。

ここで大切なのは倍率ではなく、部品に力がかかる方向と積層方向の関係を確認することです。
XY方向とZ方向は何が違う?
この記事では、試験片をプレートに寝かせて造形したものをXY方向、立てて造形したものをZ方向と呼びます。
- XY方向:同じ層の中を主に引っ張る向き
- Z方向:積み重ねた層と層を引き離す向き
FDM方式では樹脂を1層ずつ積み重ねます。見た目が同じ部品でも、荷重に対する積層の向きが変われば、壊れ方や強度も変わります。

前日に公開したPLAの試験では、XY方向45.3MPaに対してZ方向21.2MPaでした。材料が違っても、造形方向を考える必要がある点は共通しています。PLAの全10本の結果は、PLAをXY・Z方向で実測比較した記事で確認できます。
試験条件:変えたのは造形する向きだけ
XY方向とZ方向で、材料と主な印刷条件をそろえました。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 3Dプリンター | QIDI Q2 |
| フィラメント | QIDI PETG-Tough 黒 |
| ノズル温度 | 250℃ |
| ベッド温度 | 80℃ |
| 冷却 | モデルFAN 100%・補助FAN 100% |
| チャンバー | 加熱OFF・扉と天板を開放 |
| 積層ピッチ | 0.15mm |
| 壁・インフィル速度 | 30mm/s |
| インフィル | 100%・ジグザグ |
| 壁 | 2周 |
| 初期断面積 | 10.0mm² |
| 試験数 | XY方向5本、Z方向10本 |

試験片と測定環境は自作です。JISやISOなどの規格試験による材料物性値ではなく、同じ条件で造形方向の影響を比べるための試験としてご覧ください。
測定データ
XY方向:5本すべて測定上限500Nを超えた
| 試験番号 | 測定機の表示 | 表示値から換算した応力 |
|---|---|---|
| 1 | 550.4N | 55.0MPa |
| 2 | 543.2N | 54.3MPa |
| 3 | 550.3N | 55.0MPa |
| 4 | 554.1N | 55.4MPa |
| 5 | 562.7N | 56.3MPa |
| 平均 | 552.1N | 55.2MPa |
測定機の測定範囲は500Nまでです。表示はされましたが、範囲外の数値は精度が保証されません。したがって、表中の荷重と応力はすべて参考値です。

Z方向:平均37.6MPa
| 試験番号 | 最大荷重 | 破断応力 |
|---|---|---|
| 1 | 349.2N | 34.9MPa |
| 2 | 362.8N | 36.3MPa |
| 3 | 394.7N | 39.5MPa |
| 4 | 360.9N | 36.1MPa |
| 5 | 386.4N | 38.6MPa |
| 6 | 395.8N | 39.6MPa |
| 7 | 382.0N | 38.2MPa |
| 8 | 366.9N | 36.7MPa |
| 9 | 367.3N | 36.7MPa |
| 10 | 389.8N | 39.0MPa |
| 平均 | 375.6N | 37.6MPa |
初期断面積が10.0mm²なので、破断応力は最大荷重を10.0mm²で割って算出しました。Z方向の10本は測定範囲内です。
なぜ55.2MPaを正式な強度や倍率にしないのか
測定機には、精度を保証できる測定範囲があります。今回のXY方向は、その上限500Nを超えました。
表示された数字を使えば平均55.2MPaと計算できますが、範囲外の表示値を精密な測定結果として扱うことはできません。そこで今回言える結論は、次の範囲に留めます。
- Z方向は測定範囲内で平均37.6MPaだった
- XY方向は5本すべてが500Nを超える表示だった
- 今回の条件ではXY方向の方が高い値を示した
- 正確な倍率を求めるには、断面積を小さくして測定範囲内で再試験する必要がある
今後は試験片の断面積を小さくし、XY方向も測定範囲内へ収めて再検証する予定です。
実用品の造形方向を決める2つの確認
「XY方向が強かったから、すべて寝かせて造形すればよい」という意味ではありません。実用品では、次の順で判断します。
- 使うときに、どちらへ力がかかるかを考える
- その力が、積層した層を引き離す向きになっていないか確認する

向きを変えると、サポート材、表面品質、寸法精度、印刷時間も変わります。主な荷重を層間で受けない向きを優先しつつ、向きを変えにくい場合は肉厚、リブ、R形状、材料、印刷条件を見直します。荷重がかかる重要部品は、実際の使用条件に近い方法で確認してください。

今回使用したQIDI PETG-Tough
今回使用したのはQIDI PETG-Toughの黒です。販売部品でも使用している材料ですが、購入ページでは色や仕様が切り替わる場合があります。商品名が「PETG-Tough」であることを確認してください。
※Amazonリンクは記事作成時点でPETG-Toughの黄色です。今回の試験は黒を使用しています。色による差は今回検証していません。価格、在庫、色、販売元は購入前にご確認ください。
QIDI Q2本体の特徴や実際の使用感は、QIDI Q2レビューにまとめています。
PETGの強度をさらに詳しく見る
今回の記事は「造形方向」の比較です。PETGは銘柄、冷却、チャンバー条件でも結果が変わりました。
材料名だけで決めず、銘柄・冷却・チャンバー・造形方向を用途とセットで考えると、実用品の失敗を減らせます。
まとめ
- QIDI PETG-ToughをXY方向5本、Z方向10本で引張比較した
- Z方向は測定範囲内で平均37.6MPaだった
- XY方向は5本すべてが測定機の上限500Nを超えた
- XY方向の平均55.2MPaは、範囲外の表示値から算出した参考値
- 今回の条件ではXY方向の方が高い値を示したが、正確な倍率としては扱わない
- 実用品では、力がかかる方向と積層方向を確認して造形方向を決める
動画では試験片が破断する様子も確認できます。今後の再検証や材料比較も追いたい方は、つくはるガレージをチャンネル登録してご覧ください。
