※本記事にはAmazonアソシエイトのリンクが含まれます。リンク経由で購入された場合、当サイトに紹介料が入ります。掲載している試験結果と評価はすべて実測データに基づくもので、紹介料の有無による影響はありません。

「PETGフィラメントは種類が多いけれど、結局どれを買えばいいのか」

3Dプリンタで機能部品を作っていると、何度もこの問題にぶつかります。同じPETGでも、1kgあたりの価格は千円台前半から三千円台までさまざまです。メーカーの商品説明を読んでも、それぞれに「高強度」「タフ」「安定した印刷」と書かれていて、横並びでは判断できません。

そこで今回は、PETGフィラメント7銘柄を同じ日・同じ印刷条件で造形し、自作引張試験機で積層方向の強度を測りました。試験したのはCC3D、PRINSFIL、QIDI PETG-Tough、TINMORRY、SUNLU、ELEGOO、Bambu PETG Basicです。

最初に、今回の結果から得た一番大きな結論を書きます。

結論:平均で選ぶな。一番弱く出た日でも壊れないかで選ぶ

平均荷重の1位は、7銘柄で最も安いCC3Dの416.3Nでした。価格は1kgで1,399円です。今回の結果を見る限り、「高いフィラメントほど強い」とは言えません

ただし、私が販売する機能部品に平均1位のCC3Dをそのまま採用するかというと、答えは別です。CC3Dの5本は364、373、441、448、455Nと、低い2本と高い3本に分かれました。平均は高くても、毎回同じ強度が出るとは限らないからです。

機能部品で本当に知りたいのは、「一番強く出たときに何Nだったか」ではありません。いつ印刷しても、必要な強度を安定して確保できるかです。

  • 安く大量に印刷したい:CC3D
  • 外れが許されない仕事の部品:QIDI PETG-Tough
  • 安さと安定性のバランス:ELEGOO
  • 主力材料の代替候補:PRINSFIL

私自身は、販売する部品にはQIDI PETG-Toughを継続し、試作品や治具はCC3Dへ置き換える予定です。以下、そう判断した理由をデータから説明します。

なお、PETG以外も含めて「機能部品にはどの素材が向くのか」を調べた前回の比較は、20種類以上のフィラメントを実測した記事にまとめています。前回が素材カテゴリを横断した比較、今回はPETGの中での銘柄比較です。

試験したPETGフィラメント7銘柄と実購入価格

今回比較した7銘柄は、すべて黒・1kgです。価格は2026年3月〜8月に私が実際に支払った金額を使っています。Amazonで購入した6銘柄は送料無料、Bambu PETG Basicだけは公式サイト購入で、本体2,900円に送料600円を足した3,500円です。

銘柄実購入価格
CC3D1,399円
PRINSFIL1,899円
QIDI PETG-Tough3,399円
TINMORRY1,599円
SUNLU1,699円
ELEGOO1,581円
Bambu PETG Basic3,500円(本体2,900円+送料600円)

最安のCC3Dと最高価格のBambu PETG Basicでは、価格に約2.5倍の差があります。これだけ差があると、高価な銘柄ほど強いのではないかと考えたくなります。しかし、今回の積層方向の試験では、その予想どおりにはなりませんでした。

PETGフィラメント7銘柄の実購入価格と平均荷重の関係

試験条件:FDMで弱点になりやすい「積層方向」を測る

7銘柄は、すべて2026年8月16日に同一条件で試験しました。使用した3DプリンタはQIDI Q2。0.4mm硬化スチールノズル、層厚0.15mm、インフィル100%のジグザグ、壁2周です。

  • ノズル温度:250℃
  • ベッド温度:80℃
  • 冷却FAN:30%(最初の3層は0%)
  • チャンバー:OFF
  • 試験片の断面積:10.0mm²
  • 試験方向:Z直立で印刷し、層をはがす向きに引張
  • 試験本数:原則各5本

QIDI PETG-Toughを含め、7銘柄すべてチャンバーOFFです。銘柄ごとの推奨プロファイルへ最適化する試験ではなく、同じ条件へそろえたときにどのような差が出るかを見る比較です。

試験片は横に寝かせず、長手方向がZ軸になるように立てて印刷しました。そして、積層した層同士を引きはがす方向に荷重をかけています。FDM方式では、材料そのものより層と層の接着部分が先に弱点になることがあります。実際の機能部品で起こる破損も積層方向が起点になりやすいため、今回はこの最も厳しい方向を比べました。

表に記載する引張強度は、平均荷重を断面積10.0mm²で割った値です。たとえば平均416.3Nなら41.6MPaになります。ただし、これは射出成形品の物性値ではなく、今回の3Dプリント条件で作ったZ方向試験片の層間強度です。メーカーのデータシートと直接比べるための数値ではありません。

また、各銘柄5本は統計的には小さなサンプル数です。傾向を比べることはできますが、数N〜十数Nの差を有意差として断定できる試験ではありません。特にPRINSFILの392.5NとQIDI PETG-Toughの392.3Nは、差が0.2Nしかないため実質同着と考えます。

平均強度ランキング:最安のCC3Dが1位

まずは、5本の平均荷重が高い順に並べます。TINMORRYのみ、後述する理由で1本を除外した4本平均です。

順位銘柄平均荷重引張強度SDCV本数
1CC3D416.3N41.6MPa43.910.5%5
2PRINSFIL392.5N39.3MPa26.06.6%5
3QIDI PETG-Tough392.3N39.2MPa13.03.3%5
4TINMORRY388.9N38.9MPa34.99.0%4※
5SUNLU383.1N38.3MPa35.89.3%5
6ELEGOO378.0N37.8MPa10.02.6%5
7Bambu PETG Basic355.8N35.6MPa41.811.7%5

※TINMORRYは5本中1本を外れ値として除外した4本平均です。除外した試験片は159.8Nで破断しました。掴み部の滑りではありませんでしたが、破断位置が平行部中央ではなく肩部(R部)付近で、測りたい平行部の層間強度を測れていないと判断しました。他の4本は344.5〜424.1Nで、除外値との差は約2.2倍あります。

PETGフィラメント7銘柄の平均荷重と標準偏差ランキング

平均だけを見ると、最安のCC3Dが1位です。反対に、送料込みで最も高かったBambu PETG Basicは、今回の条件・今回のロット・今回の試験方法では平均が最も低い結果になりました。

Bambu PETG Basicは5本のうち1本が290.6Nと低めでしたが、記録動画を確認すると試験片は平行部中央で明確に破断していました。試験として成立しているため除外せず、5本平均355.8Nを採用しています。これはBambu PETG Basicという製品全般の強弱を断定するものではなく、あくまで今回そろえた条件での結果です。

平均で選ぶと見落とす「ばらつき」

ここからが今回の比較で一番伝えたい部分です。

平均1位のCC3Dは416.3Nでした。しかし、5本の生データは364、373、441、448、455N。低い側と高い側の間に測定値がなく、二つの群に分かれています。平均値付近の416N前後で安定していたわけではありません。

このばらつきを、平均に対する標準偏差の割合で示したものがCV(変動係数)です。CVが小さいほど、5本の結果が平均付近へまとまっています。

PETGフィラメント7銘柄の強度のばらつきと変動係数比較

CVが最も小さかったのはELEGOOの2.6%、次がQIDI PETG-Toughの3.3%です。一方、CC3Dは10.5%、Bambu PETG Basicは11.7%でした。つまりCC3Dは平均強度が高い反面、ELEGOOやQIDI PETG-Toughより結果の振れ幅が大きかったということです。

もちろん、N=5の結果だけで「この銘柄は常にこれだけばらつく」と決めることはできません。それでも、販売用部品の材料を選ぶ立場では、平均値だけを見てばらつきを無視するわけにはいきません。

平均−標準偏差を「最低保証値」として並べ直す

そこで、平均荷重から標準偏差を引いた値を、この記事では便宜上「最低保証値」と呼ぶことにしました。メーカーが保証する規格値ではなく、今回の小標本から安定性も含めて比較するための独自指標です。

順位銘柄平均荷重最低保証値
(平均−SD)
1QIDI PETG-Tough392.3N379.3N
2CC3D416.3N372.4N
3ELEGOO378.0N368.0N
4PRINSFIL392.5N366.5N
5TINMORRY388.9N354.0N
6SUNLU383.1N347.3N
7Bambu PETG Basic355.8N314.0N
平均から標準偏差を引いたPETG7銘柄の最低保証値比較

この順番にすると、平均3位のQIDI PETG-Toughが1位へ上がり、平均6位のELEGOOが3位へ上がります。反対に、平均2位のPRINSFILは4位へ下がりました。

PRINSFILとELEGOOで分かる「平均の差」の正体

この違いが最も分かりやすいのが、PRINSFILとELEGOOです。

平均ではPRINSFILが392.5N、ELEGOOが378.0N。PRINSFILのほうが14.5N高く、平均ランキングだけなら明確に上へ見えます。しかし最低保証値では、PRINSFILが366.5N、ELEGOOが368.0Nです。順位は逆転しますが、その差はわずか1.5N。実用上はほぼ並びます。

つまり、PRINSFILの平均が高かったのは、強く出た試験片が平均を押し上げた影響を含みます。平均で14.5Nあった差が、そのまま設計に使える強度差とは限らないということです。

必要強度に余裕がある試作品なら、平均や価格を中心に選んでも問題は少ないでしょう。しかし、破損がクレームや再発送につながる販売部品では、最も強く出た結果より、弱く出た側を基準にしたほうが安全です。

コスパ比較:1Nあたりの価格はCC3Dが最小

次に、実購入価格を平均荷重で割り、1Nの強度を得るのに何円かかったかを比較しました。円/Nは小さいほど、価格あたりの平均強度が高いことを表します。

順位銘柄円/N実購入価格
1CC3D3.36円/N1,399円
2TINMORRY4.11円/N1,599円
3ELEGOO4.18円/N1,581円
4SUNLU4.43円/N1,699円
5PRINSFIL4.84円/N1,899円
6QIDI PETG-Tough8.66円/N3,399円
7Bambu PETG Basic9.84円/N3,500円
PETGフィラメント7銘柄の1Nあたり価格比較

平均強度ベースのコスパはCC3Dが3.36円/Nで、2位以下から一段抜けています。試験片、確認用治具、社内で使う補助部品など、万一壊れてもすぐ作り直せる用途では魅力があります。

QIDI PETG-Toughは8.66円/Nで、CC3Dの約2.6倍です。それでも最低保証値は379.3Nで7銘柄トップでした。QIDIに払う価格差は、平均強度そのものより、ばらつきが小さく、弱い側の結果も高かったことへの対価と考えています。

Bambu PETG Basicは、今回の条件では平均荷重、ばらつき、送料込み価格を合わせると、機能部品の層間強度を優先する用途では選びにくい結果でした。ただし、印刷品質、色、供給性、プリンタとのプロファイル連携など、今回測っていない評価軸はあります。この記事の試験結果だけで製品全体を評価するものではありません。

用途別に選ぶなら、この4パターン

安く大量に印刷したい:CC3D

1kg 1,399円、平均416.3N、3.36円/N。平均強度とコスパは今回の1位です。試作を何度も回す、治具を複数作る、破損してもすぐ交換できる用途なら、材料費を抑える効果が大きいと考えます。

一方、CVは10.5%で、5本が低群と高群に分かれました。平均416.3Nを毎回期待するのではなく、弱い側では370N前後になる可能性を見込んで設計します。

外れが許されない仕事の部品:QIDI PETG-Tough

平均392.3NはPRINSFILと実質同着ですが、CVは3.3%、最低保証値は379.3Nでトップでした。販売部品のように、1個の外れがクレームや再発送につながる用途では、この安定性を優先します。

価格は3,399円でCC3Dの約2.4倍です。それでも、材料費だけでなく検品、再製作、再発送、信用まで含めれば、私の販売品では引き続きQIDI PETG-Toughを使う判断です。

安くて安定のバランス:ELEGOO

ELEGOOは平均では6位ですが、CV2.6%は7銘柄で最小、最低保証値は368.0Nで3位です。価格も1,581円に収まっています。

平均ランキングだけなら見落としやすい銘柄ですが、安さと安定性を同時に求めるなら、今回の7銘柄で最も扱いやすい位置にいます。最大値を競うのではなく、毎回同じ品質へ寄せたい用途に向きます。

主力材料の代替候補:PRINSFIL

PRINSFILは平均392.5NでQIDI PETG-Toughと実質同着です。価格は1,899円で、QIDIの約56%。平均強度と価格のバランスだけなら、有力な代替候補です。

ただしCVは6.6%、最低保証値は366.5Nで4位です。QIDIより平均が0.2N高いから、そのまま同じ設計へ置き換えられる、とは判断しません。製品ごとに必要強度を確認し、追加試験をしたうえで採用範囲を決める材料です。

上位に入らなかった3銘柄をどう見るか

用途別におすすめした4銘柄以外の3つについても、数字と判断を残しておきます。

Bambu Lab PETG Basic:今回の条件では最下位だった

平均355.8N、CV11.7%。7銘柄のなかで平均がもっとも低く、ばらつきももっとも大きい結果でした。価格は送料込み3,500円で、今回いちばん高い1kgです。

5本のうち1本が290.6Nと低い値でした。動画で破断位置を確認したところ、平行部の中央で破断していたため、正当な試験値として5本平均に含めています。この1本を除くと372.1Nとなり、4位相当まで上がります。

知名度の高い銘柄なので期待していましたが、機能部品の層間強度という一点で見ると、今回の条件では選びにくい結果でした。これはこのロット・この試験方法での結果であって、製品全般の評価ではありません。

SUNLU PETG:平均は中位、ばらつきは大きめ

平均383.1N、CV9.3%、1,699円。平均では5位、最低保証値では6位でした。

同じ中間価格帯のELEGOO(1,581円・CV2.6%・最低保証値368.0N)と比べると、価格差は約120円しかないのに、ばらつきと最低保証値の差は小さくありません。安定性を重視するなら、この価格帯ではELEGOOを選ぶ理由のほうが見つけやすい結果でした。

TINMORRY PETG:4本平均で4位、ただし1本が外れた

5本目に159.8Nという極端な値が出たため除外し、4本平均388.9Nを採用しています。破断位置が平行部の中央ではなく肩部(R部)付近で、測りたい層間強度を測れていないと判断したためです。

残る4本は344.5〜424.1Nに収まり、CVは9.0%。1,599円という価格を考えれば悪い数字ではありません。ただしN=4での評価なので、他の銘柄と同じ精度では比較できません。再試験でN=5を取り直したい銘柄です。

今回テストした7銘柄(購入リンク)

今回試験した7銘柄です。数値は「平均ピーク荷重 / ばらつき(CV) / 実購入価格」の順に並べています。価格は2026年3〜8月時点の実支払額で、変動します。

※上記はAmazonアソシエイトのリンクです。購入されると当サイトに紹介料が入りますが、試験結果と順位は実測データそのままで、リンクの有無で内容を変えることはありません。

動画で試験の様子と7銘柄の破断シーンを見る

今回の試験条件、グラフの読み方、7銘柄の破断時の様子はYouTubeにまとめています。荷重計の数字が上がっていって、パチンと落ちる瞬間が7銘柄ぶん入っています。数字だけでは伝わらない部分なので、あわせてどうぞ。

まとめ:ランキングより、弱く出た側を見る

今回の結果を、もう一度まとめます。

  • 平均1位は最安のCC3D。高いほど強いという関係は成立しなかった
  • CC3Dは低群と高群に分かれ、CVは10.5%だった
  • 平均−標準偏差の最低保証値ではQIDI PETG-Toughが1位
  • 平均6位のELEGOOは、最低保証値で3位へ上がった
  • 平均2位のPRINSFILは4位へ下がり、ELEGOOとほぼ並んだ
  • 用途によって、平均強度・安定性・価格のどれを優先するかを変える必要がある

フィラメントの平均強度は、材料を知るうえで重要な数字です。ただし、平均だけでは販売した1個が弱い側に出る可能性までは分かりません。

平均で選ぶな。一番弱く出た日でも壊れないかで選ぶ。

これが、今回35本を印刷し、実測して得た結論です。私自身は販売する部品にはQIDI PETG-Toughを継続し、試作や治具はCC3Dへ置き換えていきます。ELEGOOとPRINSFILも、価格を抑えながら用途を広げる候補として追加検証します。

次回は、同じ7銘柄を冷却FAN 100%で試験する予定です。冷却を強くすると造形の安定やオーバーハングには有利ですが、層間強度には不利になる可能性があります。銘柄ごとにどの程度変化するのか、同じ方法で確認します。

PETG以外も含めた材料選びから確認したい方は、前回の機能部品向けフィラメント実測比較もあわせてご覧ください。

ABOUT ME
つくはる
つくはる。地方在住のロードバイク乗り&3Dプリンタ愛好家。40歳手前からロードバイクに出会い、メタボ体型から脱却して以来ロードバイク歴15年以上。現在は「3Dフィット工房」の屋号で、3Dプリンタを使ったロードバイク関連オリジナル部品の設計・製造・販売を行っています。ブログでは実際に使った機材のレビューや自作パーツの開発ストーリー、副業・節約のリアルを等身大でお届けします。