Tarmac SL8にGarmin Variaを後付け感なく装着|QIDI Q2で専用レーダーマウントを自作

Specialized Tarmac SL8にGarmin Varia RTL515を取り付けたい。でも、せっかくのエアロ形状に汎用バンドを巻くと、どうしても「後付け感」が出てしまいます。
そこで、SL8のエアロシートポストへ沿う専用レーダーマウントをFusionで設計し、3Dプリンタで作りました。
今回は、最初の完成品が取り付け時に斜めになった失敗、原因の特定、左右対称+長穴への再設計、QIDI Q2での印刷、組付け、実走テストまでをまとめます。
最終版はレーダーの位置をすっきりまとめられ、走行後も向きを維持できました。QIDI Q2で印刷した細かなファジースキンが、SL8のシートポスト表面へ自然に馴染んだのも今回のポイントです。

動画で全工程を見る
設計変更、組付け、実走テスト、商品化までの流れはYouTubeにもまとめています。
初期設計を詳しく見たい方は、Tarmac SL8専用マウントの初期設計動画もご覧ください。
なぜTarmac SL8専用マウントを作ったのか
今回の製作を始めたきっかけは、メルカリShopsのお客さまから「Tarmac SL8用のレーダーマウントは作れませんか?」とお問い合わせをいただいたことでした。
SL8用は以前から自分でも作ってみたいと思っていたテーマです。ちょうど良いきっかけをいただいたので、「それなら早速作ってみよう」と設計を始めました。
そもそも、Garmin Varia RTL515は、後方から接近する車両を検知してサイクルコンピューターへ知らせてくれる便利なリアレーダーですが、付属の汎用ゴムバンド式マウントをSL8へ取り付けると気になる点がありました。
SL8のシートポストは、一般的な丸形ではなく独特なエアロ形状です。そのため、汎用品では形状へきれいに沿わず、位置や角度を合わせにくいうえ、せっかくの車体に後付け感が出てしまいます。
汎用のゴムバンド式マウントでは、次の点が気になりました。
- エアロシートポストへきれいに沿わない
- レーダーの向きや角度を合わせにくい
- バンドが目立ち、完成車の外観へ馴染みにくい
- 締め付け方によって位置がズレる可能性がある
そこで、SL8の断面形状に合わせて面で抱え、レーダーを自然な位置と向きへ保持できる専用マウントを作ることにしました。
Fusionで設計した4つのポイント
1. シートポストを面で抱える
シートポストの断面を測定・スキャンし、外周へ沿うクランプ形状を作りました。点や細い帯で押さえるのではなく、できるだけ広い面で抱える考え方です。
2. レーダーを自然な姿勢へ補正する
SL8のシートポストは後方へ傾いています。マウント側で角度を補正し、Variaが極端に寝たり、外側へ飛び出したりしない位置を探りました。
3. 横から見たシルエットを小さくする
機能だけなら形は簡単に作れます。しかし、ロードバイク用パーツは見た目も重要です。フレームとレーダーの間が間延びしないよう、連結部分の厚みと輪郭を何度も調整しました。
4. Garminベースの向きを選べるようにする
市販のGarmin互換クォーターターンベースを使い、正位置と90度回転の両方へ対応できるよう、ヒートインサートの位置を用意しています。
4つのヒートインサートを2つずつ使い分けることで、Garminベースを正位置または90度回転した向きで固定できます。使用するレーダーやベースの向きに合わせて選択できる構造です。

QIDI Q2とPETG-Toughで印刷
今回、最終版の印刷に使った3DプリンタはQIDI Q2です。材料は屋外使用と強度を考え、QIDI PETG-Toughを選びました。
印刷条件
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 3Dプリンタ | QIDI Q2 |
| 材料 | QIDI PETG-Tough |
| ノズル径 | 0.4mm |
| 積層ピッチ | 0.12mm |
| 外壁 | 3〜4周 |
| 充填率 | 40〜50% |
| サポート | オーバーハングに応じて使用 |
| ファジースキン | 距離0.02mm・深さ0.02mmを目安 |
設定値は使用環境に応じた調整が必要ですが、今回の形状では細かな積層と外壁を確保し、見た目と機能のバランスを取りました。
QIDI PETG-Toughは、ロードバイク用の機能部品で私が主力にしている材料です。PETG系なのでPLAより屋外用途へ使いやすく、今回のようなクランプ形状にも使いやすいと感じています。
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QIDI Q2自体の使い勝手や他材料での印刷については、QIDI Q2の実機レビューにまとめています。
Q2で細かなファジースキンがきれいに出た
今回、QIDI Q2を使って良かったと感じたのが、細かなファジースキンの表現です。
ファジースキンは表面へ微細な凹凸を加える機能です。強く掛けるとザラザラしすぎますが、距離・深さを0.02mm程度に抑えると、積層痕を完全に隠すのではなく、表面へ控えめな質感を追加できます。
左が通常表面、右が細かなファジースキンを加えた状態です。

SL8のエアロシートポストも完全な鏡面ではなく、落ち着いた表面です。そのため、細かな凹凸を持たせた黒いPETG-Toughは、つるつるのプリント面より車体へ馴染んで見えました。
Q2はこの弱いファジースキンでもムラが目立ちにくく、形状のエッジを大きく崩さずに質感を出せました。小さな違いですが、後付け感を減らすうえで効いた部分です。
完成したはずが、取り付け時に左へ回転した
最初のモデルは、形状も組付けも完成したように見えました。しかし実車へ取り付けると、ボルトを締める段階でマウントが左へ回転しました。
当初は走行振動を疑いましたが、動画と取り付け状態を見直すと、走る前からすでに斜めでした。

原因はクランプ部品の固定位置です。旧設計はボルト位置が左右非対称で、斜め方向から締める構造になっていました。締め付けるほど片側へ力が寄り、マウントが回転しやすくなっていたのです。
「形がシートポストに合っている」だけでは不十分でした。締結時に力がどう流れるかまで設計する必要があります。
左右対称+長穴へ再設計
対策版では次の2点を変更しました。
- ボルトの固定位置を左右対称にする
- 下側2か所を長穴にし、取り付け時に位置を調整できるようにする

組付け時は左右のボルトを最初から片側だけ締め切りません。両方を緩く掛けた状態で、マウントを手で中央へ保持し、左右を交互に少しずつ締めます。
長穴があることで、部品のわずかな個体差やプリント誤差を吸収しながら位置を合わせやすくなりました。
組付けに必要な部品
- Garmin互換クォーターターンベース
- DIN562規格のM3角薄ナット 2個
- M3ヒートインサート(L4mm・D5mm)
- クランプ用M3×10mmボルト 2本
- Garminベース用M3×6mmボルト 2本
組付けは、クランプ部品をシートポストへ当て、連結部品とGarminベースを順番に固定します。写真のように左右のボルトを交互に締め、最後にVariaをクォーターターンで装着します。

Garminベース部分は精度と耐久性を考え、市販品の使用を推奨しています。3Dプリントした参考ベースを実走用として使う前提にはしていません。
また、角ナットが動く場合に備え、任意で使えるTPU製ズレ防止リングもSTLパッケージへ収録しました。
実走テストの結果
対策版を組み付けたあと、車体を持ち上げて荷重を掛けても位置が変わらないことを確認し、実走テストを行いました。

走行後もVariaの向きは維持され、旧設計で発生していた左への回転は見られませんでした。これで形状だけでなく、固定方法を含めて仕様を決められました。
ただし、3Dプリント部品は印刷条件、材料状態、使用環境によって強度が変わります。使用前にはクラック、緩み、ボルトの状態を確認し、可能であればGarminのセーフティーテザーも併用してください。
STLデータを販売しています
自分で3Dプリントしたい方向けに、SL8専用レーダーマウントのSTLデータを販売しています。
STLパッケージには本体、連結パーツ、任意のTPUリング、README、個人利用ライセンスを収録しています。Garmin互換ベース、ボルト、ナット、ヒートインサートなどの市販部品は別途必要です。
※販売しているのはデジタルデータです。購入ページの内容をご確認ください。
まとめ
- Tarmac SL8のエアロシートポストに沿うGarmin Varia専用マウントをFusionで設計した
- 初期型はボルトを締める段階で左へ回転した
- 原因は左右非対称な固定位置と、片側へ寄るクランプ力だった
- 左右対称+長穴へ変更し、手で中央へ保持しながら交互に締める方式へ改善した
- QIDI Q2とQIDI PETG-Toughで最終版を印刷した
- Q2の細かなファジースキン表現が、SL8の表面へ自然に馴染んだ
- 実走後もレーダーの向きを維持できた
3Dプリンタでは形を作るだけでなく、締めたときの力の流れ、材料、積層、表面仕上げまで含めて商品になります。今回の失敗と改善も、次の製品設計へつながる良い経験になりました。
