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前回、PETGフィラメント7銘柄を同じ条件で比べたところ、最安のCC3Dが平均強度1位になりました。

ただし、前回の冷却ファンは30%。私が販売している小さな3Dプリント部品では、角や細部を崩さないために冷却ファン100%で印刷することが多くあります。そこで今回は、同じ7銘柄を冷却ファン100%で再試験しました。

結論から言うと、冷却ファンを30%から100%へ変えただけで、7銘柄中5銘柄の順位が動きました。前回1位だったCC3Dは6位になり、平均破断荷重は21.0%低下。一方、SUNLUは平均407.9Nで1位になりました。

FAN30%での7銘柄比較とばらつきの詳しい結果は、先にPETGフィラメント7銘柄を実測した前回の記事をご覧ください。PETG以外も含めた材料選びは、20種類以上のフィラメントを実測した総合記事にまとめています。

結論:PETGは銘柄によって冷却ファンの影響が違う

  • FAN100%の平均1位はSUNLUの407.9N
  • CC3D・ELEGOO・PRINSFILは、FAN30%より明確に低下した
  • SUNLUとBambuは平均では上がったが、「強くなった」と断定できる差ではない
  • QIDIとTINMORRYも、今回の本数では明確な変化を確認できなかった
  • FAN30%の順位を、FAN100%の小物部品へそのまま当てはめることはできない

「どのPETGが一番強いか」だけではなく、「自分が使う冷却条件で強度を保てるか」まで確認する必要がある。これが今回の試験で分かったことです。

PETG7銘柄をFAN100%で比較して分かったこと

なぜPETGを冷却ファン100%で試すのか

大きなモデルでは、1層を印刷する間に樹脂が冷える時間があります。しかし、小さな部品は1層あたりの印刷時間が短く、冷却が足りないと角や穴の周辺が崩れやすくなります。

私が販売しているロードバイク向け部品にも小型形状が多く、実際の量産では冷却ファン100%を使う場面があります。強度だけなら冷却を弱くしたほうが有利でも、形状が正しく出なければ商品にはできません。そのため今回は、造形品質を優先する実運用条件で、どれだけ積層強度が変わるかを調べました。

小さなPETG部品で冷却ファン100%を使う理由

試験条件:変えたのはモデル冷却ファンだけ

プリンタはQIDI Q2、試験方向は積層方向です。試験片をZ方向へ立てて印刷し、層と層を引きはがす向きに荷重をかけました。

  • ノズル温度:250℃
  • ベッド温度:80℃
  • チャンバー加熱:OFF
  • モデル冷却ファン:100%(前回は30%)
  • 補助ファン:100%(前回も100%)
  • 最初の3層:モデル冷却ファンOFF
  • 印刷速度:30mm/s
  • 層厚:0.15mm
  • インフィル:100%・ジグザグ
  • 壁:2周
  • 試験片断面:10.0mm²

補助ファンは前回も今回も100%です。したがって、FAN30%とFAN100%の差として比較しているのはモデルを直接冷やす冷却ファンです。

QIDI Q2で行ったPETG冷却ファン比較の試験条件

FAN100%の平均強度ランキング

順位銘柄平均荷重nSDCV
1SUNLU407.9N1022.55.5%
2Bambu Lab PETG Basic380.2N921.45.6%
3QIDI PETG-Tough375.6N1016.14.3%
4TINMORRY360.9N532.28.9%
5PRINSFIL333.4N538.711.6%
6CC3D329.0N77.82.4%
7ELEGOO304.6N529.59.7%
PETG7銘柄の冷却ファン100%積層強度ランキング

FAN100%の平均1位はSUNLUで407.9N。2位はBambuの380.2N、3位はQIDIの375.6Nでした。前回のFAN30%ではCC3Dが416.3Nで1位でしたが、今回は329.0Nで6位です。

FAN30%から100%へ変えたときの変化率

銘柄FAN30%FAN100%変化率今回の判定
Bambu355.8N380.2N+6.9%明確な変化を確認できず
SUNLU383.1N407.9N+6.5%明確な変化を確認できず
QIDI392.3N375.6N-4.3%明確な変化を確認できず
TINMORRY388.9N360.9N-7.2%明確な変化を確認できず
PRINSFIL392.5N333.4N-15.1%明確な低下
ELEGOO378.0N304.6N-19.4%明確な低下
CC3D416.3N329.0N-21.0%明確な低下
PETG7銘柄のFAN30%から100%への積層強度変化率

明確な低下が確認されたのはCC3D、ELEGOO、PRINSFILの3銘柄です。SUNLUとBambuは平均では上がっていますが、今回の試験本数では「FAN100%にすると強くなる」とまでは言えません。

「有意差なし=同じ」ではありません。今回の本数では、変化があるともないとも断定できなかった、という意味です。

CC3Dは再試験を含む7本で平均329.0N

CC3Dは初回5本のうち2本が掴み部の穴で破断しました。測りたい平行部では切れておらず、層間強度の試験として成立していないため集計から除外しています。数値が低かったから外したわけではありません。

その後、4本を再試験しました。再試験値は326.7 / 338.1 / 328.5 / 328.0Nです。初回に平行部で正常破断した3本337.1 / 314.7 / 330.1Nと合わせ、合計7本の平均329.0N、SD7.8、CV2.4%を採用しました。

前回FAN30%のCC3Dは416.3Nだったため、平均では87.3N、21.0%の低下です。小物をFAN100%で造形する用途では、前回記事の「平均1位」という結果だけで選ばないほうがよいと考えます。

前回のばらつきや用途別評価は、FAN30%でのPETG7銘柄比較に生データとともに掲載しています。

全生データを公開

平均値だけでは試験のばらつきや外れ方が分からないため、今回使った生データをすべて掲載します。単位はNです。

銘柄FAN100%の測定値
QIDI349.2 / 362.8 / 394.7 / 360.9 / 386.4 / 395.8 / 382.0 / 366.9 / 367.3 / 389.8
SUNLU387.4 / 427.0 / 409.1 / 404.8 / 407.2 / 357.1 / 411.4 / 421.1 / 415.1 / 438.8
Bambu395.3 / 369.8 / 413.5 / 391.0 / 396.4 / 361.7 / 348.3 / 385.7 / 360.0
TINMORRY404.4 / 385.3 / 333.4 / 348.2 / 333.4
PRINSFIL394.3 / 349.2 / 309.8 / 310.7 / 303.1
CC3D337.1 / 314.7 / 330.1 / 326.7 / 338.1 / 328.5 / 328.0
ELEGOO281.1 / 351.1 / 290.1 / 316.3 / 284.4

比較に使ったFAN30%の生データ

銘柄FAN30%の測定値
CC3D364.3 / 454.8 / 441.3 / 372.9 / 448.0
PRINSFIL353.4 / 384.7 / 400.9 / 423.9 / 399.5
QIDI378.1 / 381.3 / 391.2 / 404.9 / 406.1
TINMORRY424.1 / 379.4 / 344.5 / 407.8
SUNLU363.5 / 429.2 / 335.0 / 388.0 / 399.6
ELEGOO390.8 / 366.3 / 382.6 / 369.6 / 380.7
Bambu397.6 / 366.9 / 290.6 / 381.9 / 342.1

FAN30%のTINMORRYは159.8Nの1本が肩部で破断し、平行部の層間強度を測れていないため除外しています。採用値は残る4本の平均388.9Nです。

データの扱いと今回の限界

これは個人で取得したデータで、専門機関の試験ではありません。試験本数も銘柄ごとに異なります。

平均値の差が偶然かどうかは、試験本数が違う場合にも使えるWelchのt検定で確認しました。有意水準は5%です。計算にはAIの補助を使い、判定だけでなく検証できるよう生データも公開しています。

  • 明確な低下が出た:CC3D / ELEGOO / PRINSFIL
  • 今回の本数では明確な変化を確認できなかった:SUNLU / Bambu / QIDI / TINMORRY

今後は、印刷位置と試験本数をそろえる、掴み部で破断しにくい治具へ改良する、試験片の断面を実測して計算へ反映する、といった改善を進めます。試験方法やデータの見方で気になる点があれば、コメントで教えてください。

FAN100%で選ぶならどのPETGか

平均強度と価格のバランス:SUNLU

SUNLUは平均407.9Nで1位、購入価格1,699円で、今回の平均強度に対する価格も最も低くなりました。小型部品をFAN100%で作る候補として追加検証する価値があります。

ただし、FAN30%より平均が上がったことを「FAN100%で強くなる」と断定はできません。造形品質、寸法、表面の質感、ロット差まで確認してから用途を決めます。

冷却条件を変えても低下が小さかった:QIDI PETG-Tough

QIDIは392.3Nから375.6Nへ4.3%低下しましたが、今回の本数では明確な変化を確認できませんでした。FAN100%でのCVも4.3%と比較的小さく、安定性を重視する用途では引き続き候補です。

FAN100%では注意:CC3D・ELEGOO・PRINSFIL

この3銘柄はFAN30%から明確な低下が確認されました。材料そのものが悪いという意味ではなく、層間強度を優先するなら冷やしすぎに注意が必要という結果です。

大きめのモデルや、FAN30%でも形状を保てる部品では評価が変わります。特にCC3DはFAN30%で平均1位だったため、用途と冷却条件をセットで考える必要があります。

今回テストしたPETG7銘柄の購入リンク

価格は2026年8月時点の実購入額で、セールや販売条件により変動します。強度だけでなく、必要量、失敗率、寸法精度、表面品質も含めて選んでください。

PETG7銘柄のFAN100%平均強度に対する価格比較

次回はチャンバー45℃で7銘柄を比較

次回はチャンバーを45℃に加熱し、同じ7銘柄を測ります。第6弾以降は補助ファンを基本0%にするため、今回とはチャンバー温度だけでなく補助ファン条件も異なります。単純な「チャンバーだけの効果」とはせず、別の実運用条件として結果を確認します。

まとめ:PETGは冷却条件とセットで選ぶ

  • FAN100%の平均1位はSUNLUの407.9N
  • FAN30%から100%へ変えると、7銘柄中5銘柄の順位が動いた
  • CC3D・ELEGOO・PRINSFILは積層強度が明確に低下した
  • SUNLU・Bambu・QIDI・TINMORRYは、今回の本数では明確な変化を確認できなかった
  • 銘柄名だけでなく、部品サイズと冷却設定まで含めて材料を選ぶ必要がある

FAN30%での強度・ばらつき・用途別の選び方は、前回のPETG7銘柄比較記事へ。PLA・PETG・PC系など材料カテゴリから選びたい方は、機能部品向けフィラメントの実測比較もあわせてご覧ください。

ABOUT ME
つくはる
つくはる。地方在住のロードバイク乗り&3Dプリンタ愛好家。40歳手前からロードバイクに出会い、メタボ体型から脱却して以来ロードバイク歴15年以上。現在は「3Dフィット工房」の屋号で、3Dプリンタを使ったロードバイク関連オリジナル部品の設計・製造・販売を行っています。ブログでは実際に使った機材のレビューや自作パーツの開発ストーリー、副業・節約のリアルを等身大でお届けします。