TREK CarBackレーダーを後付け感ゼロで|自作マウントが折れて、2ピース設計に変えた話

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ロードバイクにTREKのリアレーダー「CarBack」を付けるとき、標準ではゴムバンドでシートポストに固定します。ただ、私はSpecializedのPowerサドルに乗っていて、サドルの下にすっきり収まる専用マウントがほしいと思い、3Dプリンタで設計して作りました。
私は3Dプリンタで自転車部品を設計・製造・販売している会社員で、ロードバイクにも乗っています。この記事は、そのマウントの話を2部構成でまとめたものです。
- 前半:専用マウントを設計・製作した話(2025年3月の動画)
- 後半:販売後に根元が破損し、一体型をやめて2ピースの分割設計に変えた話(2026年9月の動画)
先に書いておくと、後半の破損は原因を一つに特定できているわけではありません。分かっていることと推測を分けて書きます。
動画:専用マウントができるまで(前半)
設計から取り付けまでは、動画で見るのが早いです。12分30秒あります。
動画で扱っているのは、主に次の3点です(概要欄より)。
- 3Dプリンタでロードバイク用のカスタムパーツを作る流れ(概要)
- TPUを使った落下防止の工夫
- レーダーがしっかり固定される、スマートなマウントの作り方
前半:サドルに収まる専用マウントを作る
ゴムバンド固定が気になった
CarBackレーダーはゴムバンドで固定するのが一般的で、取り付けは簡単です。ただ、見た目がどうしても後付けっぽくなります。サドルの下にもっとスマートに付けられないか、というのが出発点でした。
対象にしたのは、次のレーダーとサドルです(動画の概要欄の記載)。
- レーダー:TREK CarBack
- サドル:Specialized POWER COMP / S-WORKS POWER CARBON / S-WORKS POWER(ミラー付き)
サドルの下は、もともと見た目の整理が難しい場所です。ライトやレーダーを付けると、バンドやブラケットが目立ちやすくなります。専用の形にすれば、サドルの形に合わせて、すっきりまとめられると考えました。
レーダー本体は、AmazonでTREK CarBackレーダーを探すから確認できます。購入前に、型番と対応する車種・取り付け方法をご確認ください。
レーダーの形をデータにする

レーダー本体の3DデータをMeshmixerで確認している画面(動画の素材より)
専用マウントは、まずレーダー本体の形を正確に知るところから始まります。動画では3Dスキャナー(CR-Scan Lizard)を使い、取り込んだデータをMeshmixerで確認しながら設計を進めています。レーダー裏面のレール部分の形が、マウントの受け側の寸法に直結するためです。
素材と取り付け方

レーダーをマウントに取り付ける様子(動画の撮影素材より)
素材は、動画の時点で次のように使い分けていました。
- マウント本体:PC(ポリカーボネート)。Prusa MK4Sで印刷
- カバーとゴムバンド:TPU(柔らかいゴム状の素材)
素材を分けた理由は、商品ページの説明がいちばん簡潔です。マウント本体のPCは「高耐候性・高強度」、カバーとゴムバンドのTPUは「柔軟性・耐衝撃性」と記載しています。本体は硬い素材、カバーやバンドは柔らかい素材、という使い分けです。
スライサーはPrusaSlicer 2.9.0です。レーダーは横にスライドさせて取り付けられる形で、ゴム素材(TPU)を使って保持力を高めています。さらに、落下対策としてストラップを付けられるようにしました。

サドル下に取り付けた状態。ストラップも付けています(動画の撮影素材より)
レーダーを守る専用カバーも付属します。「後付け感ゼロ」とタイトルに付けたとおり、サドル専用の形にしたことで、バンド固定よりもサドルの下にまとまって見えます。

横から見た状態(動画の撮影素材より)
商品ページの内容
このマウントは、公式ショップ3dfitdesign.comで販売しています。現在販売しているのは、後半で紹介する改良後の形です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 完成品(サドルマウント+カバー) | 2,980円 |
| 完成品(カバーのみ) | 980円 |
| 適合サドル | パワーコンプ、S-WORKS パワーカーボン、S-WORKS POWER(ミラー付き)、パワーウィメンズ ミミックコンプ |
素材や同梱物など最新の仕様は商品ページでご確認ください。
ここまでが、作り始めた当時の話です。当時の私は、後処理と組み立てを少なくしたくて、マウントを一体で設計していました。印刷してそのまま使えるほうが、作る側も使う側も楽だと考えたからです。この形で販売を始めました。
後半:使っていたら、根元が折れた
動画:折れた理由と分割設計(後半)
その後に起きたことは、別の動画でまとめています(7分13秒)。以下はその内容を、記事用に整理したものです。
破損の報告から販売再開まで
時系列は次のとおりです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2025年5月末〜6月初め | 購入者の方から、凹凸のある路面で根元が破損したと報告。ストラップのおかげで、レーダー本体は落下を免れた |
| 2025年6月 | 一体型をやめ、2ピースの分割構造へ設計変更。対策品を無償でお送りした |
| 2025年9月 | 改良品で約2,500km使って破損なし、との使用報告をいただく |
| 2025年9月 | 改良品で販売を再開 |
報告によると、約1,200〜1,300kmを走ったところで根元が折れたそうです。国道の舗装がガタガタした区間が20〜30分続き、緩い下りで速度が出て、交通量が多く荒れた路面を避けにくかった、という状況でした。

破損時の使用状況(動画より)。繰り返す振動で負荷が増えた可能性がある、という整理です
原因は「候補」まで
破損の原因は、特定できていません。走行中にマウントへかかる力を測ったわけではないためです。考えられる候補は次のとおりです。
- レーダーの重さ:CarBackは公式の掲載値で87gあり、小型のリアライトよりかなり重い
- 根元から離れた位置で支える形:根元から張り出した先で重さを受ける、片持ちの構造だった
- 繰り返す路面の振動:ガタガタ道を走り続けたことで、根元の負荷が増えた可能性
- 積層方向:根元付近に、層を引き離す向き(Z方向)の力を受けやすい部分があった可能性
ひとつ補足すると、このうち「重さだけが原因」「振動だけが原因」と言い切れる材料は、私の手元にはありません。複数が重なったと考えるほうが自然ですが、それも推測です。破損した個体の材質も、確定できていません。

一体型のマウントと、形状確認用のレーダーのモック。実物のレーダーではありません(動画より)
一体型だと、どこかに苦しい向きが残る
3Dプリンタで多く使われるFDM方式は、材料を一層ずつ積み重ねて形を作ります。そのため、層を引き離す向きの力には注意が必要です。
私が別の試験片で測った結果では、PETGはZ方向がXY方向より約3割、PLAでは約半分低い値でした(PETGのXY方向とZ方向を比べた記事も参考にしてください)。ただし、これは試験片の結果で、マウント本体の強度の差を示す数字ではありません。材料や形、印刷条件で変わります。
一体で作ると、どの面を下にしても、どこかの部分がZ方向に積み上がる形になりがちです。向きを変えて一か所を良くすると、別の場所が悪くなる、ということが起きます。
2ピースに分けた
そこで、一体をやめて2ピースに分けました。

分割した2つの部品(動画より)
考え方は次のとおりです。
- 破損した根元付近が、層を引き離す向きにならないように、部品ごとに印刷の向きを選ぶ
- 印刷後に2つをつなぎ、完成形に戻す。完成したときに一体であれば、印刷するときまで一体である必要はない
つなぎ方は、ナットとボルトです。

ボルトで2つの部品を連結する(動画より)
ここで大事なのは、ただ切り分けたわけではないという点です。接合部が新しい弱点になりうるので、つなぐ部分やボルトまわりも一緒に設計し直しています。

2ピースを組み立てた状態(動画より)
増えた手間と、楽になったこと
分割には、手間も増えます。
- 設計が複雑になる(接合部、ボルトの位置、クリアランスなど)
- 部品の管理が増える
- 組み立ての作業が増える
一方で、楽になった点もあります。一体のときは、張り出した部分がオーバーハングになり、印刷速度を落としたり冷却を強めたりしないと形が乱れました。分割すると、その面が平らに印刷できるようになり、印刷もしやすくなりました。失敗したときも、その部品だけ作り直せます。
なお、印刷時間や不良率を数字で比べたデータは取っていません。強度が何倍になった、といった数字もありません。「分ければ必ず強くなる」という話でもありません。
改良後の使用報告:約2,500km
改良品については、お客様から次の報告をいただきました。
- 約1,000kmの時点で、ヒビや割れなし
- その後、合計約2,500kmでも問題なし
これは1件の使用報告です。寿命や安全を保証する試験ではありません。すべての道や使い方で壊れないという意味でもありません。それでも、設計を見直したあとの経過として、私にはとても参考になりました。
落下防止ストラップは併用してください
今回の破損でも、ストラップのおかげでレーダー本体は落下せずに済みました。どんなマウントでも、落下防止ストラップの併用をおすすめします。
まとめ
- 前半:TREK CarBackレーダーをPowerサドルにすっきり付けるため、専用マウントを設計・製作した
- 後半:一体型で販売後、根元が破損した報告を受け、2ピースの分割構造(ナットとボルトで連結)に設計変更した
- 破損の原因は特定できていない。重さ、張り出した形、振動、積層方向は「候補」
- 分割で印刷方向を選べるようになり、印刷もしやすくなった。一方、設計・部品管理・組み立ての手間は増えた
- 改良品は、1件の使用報告で約2,500km問題なし。寿命や安全の保証ではない
- ストラップは併用する
材料や設定を変えてもうまくいかないときに、形そのものを見直す、という選択肢が私にはいちばんの学びでした。
このマウントは、3D FIT Designの商品ページで販売しています。購入前に、お使いのサドルとレーダーが適合するか、最新の仕様をご確認ください。
実用品づくりの失敗と工夫は、つくはるガレージでも公開しています。

