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PLAとPETGに慣れてくると、次に気になるのがTPUだと思います。

ところが買おうとすると、85A、90A、95Aと硬さの表記が出てきます。数字が違うだけに見えますが、実物を手で曲げると、使い心地はかなり違いました。

私は3Dプリンタで設計した部品を製造・販売していて、ロードバイク用の部品ではTPUをよく使います。この記事では、実際に作って使っている部品を並べて、どの部分に85Aを使い、どこに95Aを使っているかをまとめます。

先に結論を書くと、PETGだけで作るより、TPUを1本持っておくほうが作れるものの幅がはっきり広がります。

同じ形のTPUバンドを手で引っ張って85Aと95Aの伸びを比べる

同じ形のバンドでも、硬さが違うと伸び方が変わる(本人撮影)

動画:実物を曲げながら6分で

手で引っ張ったときの伸び方の違いと、実際の作例は動画で見るのが早いです。

85Aと95Aは、手で引っ張ると違いが分かる

同じ形のケーブルバンドを、85Aと95Aの両方で印刷して比べました。計測ではなく、手で引っ張ったときの感触です。

硬さ手で引っ張ったときの感じ向いていると感じた使い方
85A(柔らかい)ビヨーンとよく伸びるしっかり密着させたい、当たりを柔らかくしたい部分
95A(硬め)抵抗があり、そんなに伸びない形を保ちたい、扱いやすさを優先したい部分

数字が小さいほど柔らかく、大きいほど硬いという関係です。「どちらが優秀か」ではなく、その部品にどれくらいの剛性が欲しいかで選び分けるものだと思っています。

なお、同じ硬度でも銘柄・形状・壁の厚さ・内部構造・印刷条件で使用感は変わります。この記事の感触も、私が作った形での話として読んでください。

作例で見る、TPUの使い分け

ケーブルバンド:伸びる弾性でケーブルを留める

TPUで印刷した伸びる弾性でケーブルを留めるバンド

伸びる弾性でケーブルを留めるバンド(本人撮影)

USBケーブルなどをまとめるバンドです。伸ばして引っかけると、戻ろうとする力でしっかり留まります。

同じデータでも85Aだとよく伸び、95Aだと伸びにくい。束ねる本数や太さが変わるものなら85A、しっかり固定したいなら95A、という使い分けになります。

※このバンドは私のオリジナルモデルではなく、Rob the 3D Printing Dadさんが公開されているStay-on Reusable Cable Tie in TPUを印刷した作例です(ライセンス:CC BY-NC-SA 4.0)。利用条件はリンク先をご確認ください。

AirTag収納キャップ:ギュッと密着させる蓋

本体はPETG、蓋はTPUで作ったAirTag収納キャップ

本体はPETG、蓋はTPU。AirTagを挟み込んで収める(本人撮影)

AirTagを収めるケースです。本体側はPETG、蓋側はTPUで作っています。

ギュッと密着させて押さえる蓋のような部品は、TPUがちょうどいいと感じています。AirTagを挟み込んでケースに入れることで、振っても落ちにくくなります。

ライト固定バンド:よく伸びる素材だからできる

TPUで印刷したライトを固定するためのバンド

ライトを固定するためのバンド(本人撮影)

ライトを固定するバンドも、よく伸びる素材だから成立する部品です。硬い材料では同じ形は作れません。

保護カバー:しなるから、包める

TPUのしなりを活かして作ったパーツの保護カバー

しなりを活かした保護カバー(本人撮影)

パーツの保護カバーです。TPUはしなるので、こうした「包む」形が作れます。スマホカバーのようなものも同じ考え方で作れると思います。

防眩シェード:伸ばしてはめて、戻る力で固定する

PETG製の防眩シェードをTPUの輪っかでヘッドライトに固定する

PETG本体を、TPUの輪っかでヘッドライトに固定する(本人撮影)

ヘッドライトの眩しさを抑えるための防眩シェードです。ここが個人的に一番おもしろい使い方でした。

引っかかりのないツルッとしたライトに、ネジも接着も使わずに部品を付けたい。そこで、シェード本体はPETGで作り、TPUの輪っかをはめ込む構造にしています。

伸ばした状態でライトに掛けると、ゴムが戻ろうとする弾性でしっかり固定されます。振っても取れないくらいの固着力になりました。

FLEXLOCKのクッション:柔らかさ+密度で当たりを調整

フレームに触れる部分に密度を落とした85AのTPUクッションを使う

フレームに触れる部分は、密度を落としてクッション性を高めた(本人撮影)

ロードバイクの前輪を固定するアイテムです。フレームを挟み込む側は、表面に傷を付けたくない部分になります。

ここには材料自体が柔らかい85Aを使い、さらに密度をかなり落として、中が空洞に近いスポンジ状の構造にしています。材料の硬さだけでなく、内部構造でも当たりの柔らかさをコントロールできるという例です。

インソールも同じ考え方で、密度を変えることで1種類の材料から違う硬さを出しています。詳しくはTPUインソールを4枚自作して履き比べた記事にまとめています。

どれを買えばいい?

まず試すなら 95A

いちばん扱いやすいのが95Aです。硬めなので送り出しのトラブルも起きにくく、バンドやキャップなど、用途も広く使えます。最初の1本としてはここが無難だと思います。

もっと柔らかく当てたいなら 85A

フレームに触れるクッションや、しっかり密着させたい蓋のような部分には85Aです。伸びが大きいぶん、プリンター側の対応は確認が必要になります。

中間が欲しくなったら 90A

95Aでは硬い、85Aでは柔らかすぎる。そう感じたときの選択肢が90Aです。最初から3本そろえる必要はなく、必要になってから買い足すで十分だと思います。

買う前に確認したいこと

  • お使いの3Dプリンターと送り出し装置が、その硬さのTPUに対応しているかを確認してください。柔らかいTPUほど送り出しはシビアになります
  • 同じ硬度表記でも、銘柄・形状・壁の厚さ・内部構造・印刷条件で使用感は変わります
  • TPUは水分を吸いやすい材料です。開封後の保管方法も一緒に考えておくとラクになります

保管については、乾物ストッカーに入れたまま給材している運用を別記事にまとめました。柔らかいTPUは外部スプールから送ることが多いので、保管と給材をひとつにできると扱いやすくなります。

今回使ったTPU

同じブランドでも、色・内容量・販売元が入れ替わることがあります。購入前に、材質、フィラメント径、内容量、硬度、販売元をご確認ください。

よくある質問

Q. 85Aと95A、最初に買うならどっち?

扱いやすさなら95Aです。柔らかさが必要な部品を作る予定があるなら85Aを選んでください。

Q. 数字が小さいほうが良い材料ですか?

いいえ。数字は硬さの表記で、小さいほど柔らかいというだけです。作りたい部品に必要な剛性で選ぶものです。

Q. 硬さは材料でしか変えられませんか?

内部構造(密度)でも変えられます。 私はフレームに当たるクッションで、密度をかなり落として柔らかさを出しています。1種類の材料でも、設定で使い分けられる幅があります。

Q. どのプリンターでも印刷できますか?

機種と送り出し装置によります。柔らかいTPUほど条件がシビアになるので、購入前にお使いの環境の対応を確認してください。

Q. PETGとどう使い分けていますか?

形を保つ本体はPETG、密着させたり伸ばしたりする部分はTPU、という組み合わせが多いです。防眩シェードやAirTagケースがその例です。

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まとめ

  • 85Aはよく伸び、95Aは抵抗があって伸びにくい
  • 密着させたい・当たりを柔らかくしたい部分は85A、形を保ちたい部分は95A
  • 硬さは材料だけでなく、密度(内部構造)でも調整できる
  • まず試すなら95A、柔らかさが要るなら85A、中間が欲しくなったら90A
  • 同じ硬度でも銘柄・形状・壁厚・印刷条件で使用感は変わる
  • 購入前にプリンターと送り出し装置の対応を確認する

PETGだけで作るより、TPUを組み合わせたほうが作れるものの幅は確実に広がります。使いこなせると面白い材料なので、ぜひ1本試してみてください。

実際に作って分かったことはつくはるガレージでも公開しています。

ABOUT ME
つくはる
つくはる。地方在住のロードバイク乗り&3Dプリンタ愛好家。40歳手前からロードバイクに出会い、メタボ体型から脱却して以来ロードバイク歴15年以上。現在は「3Dフィット工房」の屋号で、3Dプリンタを使ったロードバイク関連オリジナル部品の設計・製造・販売を行っています。ブログでは実際に使った機材のレビューや自作パーツの開発ストーリー、副業・節約のリアルを等身大でお届けします。