ASAの強度は冷やし方で変わる?冷却ファンとチャンバー温度を引張試験で比べた結果

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ASAは、熱や日光に比較的強く、屋外で使う部品の候補になる材料です。ただ、冷却ファンやチャンバー温度など、印刷条件で迷いやすい材料でもあります。
私は3Dプリンタで設計した部品を製造・販売している50代の会社員です。PETGでは耐熱性が心配な用途にASAを試したくて、冷却ファンとチャンバー温度設定を変えて引張試験をしました。この記事は、その試験の詳細をまとめたものです。
なぜ販売する部品にはPETGを使っているのか、という話は ASA・PCも試した私が、実用品にPETGを選ぶ理由 に書きました。この記事はその続きです。
先に結論です。
- チャンバー設定55℃で、FAN100%はFAN25%より層を引き離す向きの強さが約23%低かった
- FAN25%で、チャンバー設定55℃は35℃より約13%高かった
- ただし本数が少なく、ばらつきも大きいので、傾向として見るのが妥当
- 私なら、熱に強くしたい部品で、層を引き離す力があまりかからないところに使う。印刷の設定には敏感で、私には少し上級者向けの材料
動画:試験の様子を7分で
なぜASAを試したのか

ASAで作ったシリカゲル用の容器(動画より)
きっかけは、シリカゲルを入れる容器です。オーブンの熱風設定100℃で60分加熱したところ、シリカゲルの色が戻り、容器に見た目の変形はありませんでした。ただし実温や荷重下の耐熱性は測っておらず、同じ加熱をおすすめするものでもありません。
そして、熱に強いことと、引っ張って強いことは別です。そこで引張試験をしました。
試験の条件

条件札と試験機。計器にピーク保持の141.4Nが表示されている(動画より)
主役は、層を引き離す向き(Z方向)の試験です。試験片を立てて印刷します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料 | PRINSFIL ASA(黒・1.75mm) |
| プリンター | PRUSA CORE ONE(試験札には「CORE1」と表記) |
| 試験片 | 自作のダンベル形。中央部の設計断面10.0mm² |
| ノズル/ベッド | 260℃/110℃(スライス用ファイルの記載) |
| 冷却ファン | 25% / 50% / 100% |
| チャンバー | 設定35℃ / 設定55℃(実測ではなく設定値) |
| 本数 | 条件ごとに5本 |
| 強度の出し方 | 計器のピーク保持値(N)÷ 設計断面積10.0mm² |
穴付近で破断した試験片は、集計から除外しました。穴には力が集中し、中央部の強さとして扱えないためです。したがって以下の平均は、条件全体の平均ではなく、中央で破断したものだけの平均です。
結果1:冷却ファンの比較(チャンバー設定55℃)

FAN25%と100%の比較(動画より)
| 冷却ファン | 中央で破断 | 平均(MPa) | 標準偏差 | 範囲(MPa) |
|---|---|---|---|---|
| 25% | 5本/5本 | 約13.5 | 約0.8 | 12.3〜14.2 |
| 100% | 4本/5本 | 約10.4 | 約2.3 | 7.6〜12.7 |
FAN100%は25%より平均で約23%低い結果でした(25%側を基準にした低下率)。
ただし、FAN100%側は値の幅が広く、25%側の最低値と一部重なっています。本数も4〜5本です。「強く冷やすと必ず弱くなる」と言える数字ではなく、今回の条件での傾向です。
結果2:PETG-Toughの過去試験との比較

PETG-Toughの過去の試験(動画より)
以前、QIDI Q2でPETG-Toughも調べています。ファン30%は平均39.2MPa(5本)、100%は37.6MPa(10本)で、低下は**約4%**でした。ASAの約23%と比べて、私は「ASAのほうが冷やし方に気を使う材料」と感じました。
ただし、プリンター・形状・チャンバー条件・本数が違う別の試験です。同じ条件の比較ではないので、感覚を裏づける参考程度に見てください。PETGの冷却とチャンバーの比較は、こちらの記事にまとめています。
結果3:チャンバー温度設定の比較(FAN25%)

チャンバー設定35℃と55℃の比較(動画より)
| チャンバー設定 | 中央で破断 | 平均(MPa) | 標準偏差 | 範囲(MPa) |
|---|---|---|---|---|
| 35℃ | 3本/5本 | 約11.9 | 約1.4 | 10.4〜13.1 |
| 55℃ | 5本/5本 | 約13.5 | 約0.8 | 12.3〜14.2 |
55℃設定のほうが、平均で約13%高い結果でした。ただし値の範囲は重なっており、35℃側は中央で破断したのが3本だけです。因果までは言えません。
なお、35℃設定・ファン100%の5本は、すべて穴付近で破断し、平均を出せませんでした(ファン50%は3本/5本で約11.1MPa)。穴で折れた本数は、「弱さ」として数字にはしていません。
補足:XY方向ではPETG-Toughより約26%低かった

層に沿って引くXY方向の比較(動画より)
QIDI Q2で、以前のPETG-Toughと同じ形状(公称断面6.5mm²)の試験片を使い、各5本を引きました。PETG-Toughは約48.7MPa、ASAは約35.9MPa(5本とも中央で破断、標準偏差は約0.5)で、ASAは約26%低い結果でした。外周数など印刷条件は材料ごとに違うので、材料そのものの順位ではありません。引っ張る強さだけを求めるなら、私はまずPETG-Toughを使います。
冷やしすぎても、冷やし足りなくても
では、ファンを弱くすればいいのでしょうか。単純にそうとは言えませんでした。

印刷した試験片の表面。うねりや乱れが見える(動画より)
表面にうねりや乱れが出ることがあります。私は冷える時間が足りなかった可能性もあると考えていますが、原因はこの写真だけでは断定できません。
小さい部品は、一層をすぐに印刷し終わります。下の層が柔らかいうちに次の層を重ねると、形が崩れやすくなります。かといって風を強くすると、層のつながりが弱くなることもあります。そこで、風の強さに加えて次の層までの時間も調整します。
- 印刷速度を落とす
- 複数の部品を並べて、一層ずつ順番に印刷する
ただし、今回も5個並べて印刷しているので、複数にすれば必ず解決するわけではありません。
周りの空気の温度も関わる
「中を温めながらファンで冷やすのは、反対のことでは?」と思うかもしれません。ポイントは、どんな温度の空気を当てるかです。
周りが開いたプリンターは、部屋の空気で冷やします。寒い部屋やエアコンの風が当たる場所では、冷えすぎることがあります。囲いの中を温めておけば、冷却ファンもその温まった空気を使い、外からの風も遮れます。同じファン25%でも、風の強さと空気の温度のセットで冷え方が変わります。ただし囲い付きとオープン型の比較試験はしていないので、囲いの優位性を証明したわけではありません。
CORE ONEは専用のチャンバーヒーターを使わず、ベッドの熱と排気ファンで温度を調整します。私の環境では55℃まで上がりました(印刷中ずっと一定とは限りません)。QIDI Q2には専用のチャンバーヒーターがあります。方式は違いますが、ASAを使うなら、私は周囲の温度を管理しやすい囲い付きのプリンターを選びたいです。
換気は基本

3Dプリンターの近くに置いている小型の空気清浄機(動画より)
ASAはABSより匂いが少ないといわれますが、私にはそれでも結構気になります。私は換気扇を回し、小型の空気清浄機も数台置き、近くの空気質モニターで表示の変化も見ています。ただ、匂いが弱いとか、数値が低いから安全というわけではありません。換気が基本で、機器は補助です。
私ならASAをこう使う
普段の実用品は、まず使い慣れたPETGです。そこから熱や日光への強さが必要になったとき、ASAを候補にします。層を引き離す方向に大きな力がかかる部品では慎重に考え、力のかかる向きを設計で工夫します。分割して組み立てるなら、接合部の確認も別に必要です。
ASAなら何でも強くなるわけではありません。熱への強さを活かしつつ、冷やし方と力のかかり方を考えて使う。私には少し上級者向けですが、使いどころのある材料だと感じました。
今回使った材料
同じブランドでも、色・内容量・販売元が入れ替わることがあります。購入前に、材質、フィラメント径、内容量、販売元をご確認ください。
- PRINSFIL ASA:AmazonでPRINSFIL ASAを探す
- QIDI PETG-Tough(比較対象):下の商品リンクから
よくある質問
Q. ASAは冷却ファンを弱くしたほうが強くなりますか?
今回の試験ではFAN25%のほうが平均値は高い結果でしたが、本数が少なく値の幅も重なっています。冷却を弱めると表面が荒れることもあるので、弱めればいいとは言えません。
Q. この数字はASAという材料の強度ですか?
いいえ。私のプリンター、試験片、印刷条件で、中央で破断したものだけを集計した参考値です。材料一般の強度や、部品の安全性を示すものではありません。
まとめ
- Z方向の試験で、FAN100%はFAN25%より平均約23%低かった(チャンバー設定55℃)
- チャンバー設定55℃は35℃より平均約13%高かった(FAN25%)。ただし本数が少なく、値の幅は重なる
- PETG-Toughの過去試験では、ファン30%から100%の低下は約4%。条件が違うので参考程度
- ファンを弱めるだけでなく、次の層までの時間と空気の温度もセットで考える
- 換気が基本。空気清浄機やモニターは補助
PETGを実用品に使っている理由は、前の記事にまとめています。
材料の比較や、実用品づくりの工夫はつくはるガレージでも公開しています。

